犬の歯周病!原因や治療法、放置リスクって?
公開日:2023/02/13 / 最終更新日:2024/07/10
犬の歯周病とは
歯周病は
歯と歯ぐき(歯肉)の間に入った
歯周病菌によって
歯ぐきが炎症を起こす病気です。
悪化すると
歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)が
溶けてしまいます。
溶けてしまった骨は
元に戻りませんので、
手遅れになる前に
治療しなければいけません。
人の場合は
口の病気と言えばまず
「虫歯」ですが、
犬の場合は
虫歯になりにくい
構造をしているため
「歯周病」のほうが
メジャーな病気です。
犬が歯周病になると
自然に歯が抜けたり、
顎の骨が折れたりします。
歯周病菌が血管に入って
全身に広がると
腎不全や心不全につながる場合も
あります。
特に持病として
心臓病などを患っている
シニア犬(老犬)は
悪化する要因になります。
歯肉炎と歯周炎
歯周病は
「歯肉炎」と「歯周炎」にわけられ、
初期は歯肉炎、
次いで歯周炎となり、
状態によって「軽度」「中度」「重度」の
3段階にわけられます。
歯周炎が重度になると
膿が溜まる
「歯槽膿漏」(しそうのうろう)となり、
歯を残すのは
困難になります。
歯周病の進行
- 歯肉炎
歯垢や歯石が溜まり始め、
歯ぐきが赤く腫れる。
硬いものを食べたり、
歯磨きをしたりしたときに出血する。 - 軽度の歯周炎
歯肉炎が進み、
歯ぐきの腫れが大きくなる。
硬いものを食べたり、
歯磨きをしたりしたときに出血し、
口臭が出始める。 - 中度の歯周炎
歯ぐきに膿が溜まり、
ぶよぶよしてくる。
歯がぐらつき、出血や口臭が強くなる。 - 重度の歯周炎(歯槽膿漏)
歯ぐきから膿が出てくる。
歯根は歯石で覆われ、
歯を支えることが難しくなり
自然に歯が抜ける。
歯周病の原因
歯周病の原因は、
「歯周病菌」です。
歯周病菌は
「歯垢」(プラーク)で増えるため、
歯垢を取り除かなければ
菌がどんどん繁殖してしまいます。
歯周病になりやすい犬の特徴
歯周病は
どんな犬でも
なる可能性がありますが、
「小型犬」と「シニア犬(老犬)」は
なりやすい傾向があります。
歯の大きさは
大型犬と小型犬で
体の大きさほど
違いがありませんので
小型犬のほうが
歯と歯の間隔が狭くなり、
歯周病になりやすくなります。
また、
「フレンチブルドッグ」や「パグ」などの
短頭種は
上あごが短く犬歯の後ろが
密着して生えている場合があります。
こちらも
歯と歯の間隔が狭くなり、
歯周病になりやすくなります。
犬の歯周病の症状(チェックポイント)
歯周病は
だんだんと進行していきますので、
早期発見・早期治療が大切です。
飼い主さんが
ご自宅でどんな症状に
気をつければいいのか。
チェックポイントを紹介します。
1、口臭
歯周病で
最もわかりやすい症状が口臭です。
犬の口が臭いときに
考えられる原因は、
ほとんどが歯周病です。
早めの対処が
必要になりますので、
動物病院で診てもらいましょう。
2、歯ぐきの腫れ
歯ぐきが
炎症を起こすと赤くなり、
腫れが大きくなって
膿が溜まると
ぶよぶよして膿が出てきます。
膿が出るほど進行してしまうと
治療が難しくなりますので、
日頃のチェックが重要です。
3、歯の変色
歯石がつくと
歯が根元から黄色や茶色に
変色したように見えます。
歯石自体は
歯周病の原因になりませんが、
歯周病菌の巣になることで
炎症が悪化します。
歯石は歯と歯ぐきの間
(歯周ポケット)にもできますので、
表面の歯石を取っただけでは
十分な治療にはなりません。
4、歯ぐきの出血
歯ぐきの腫れが悪化すると
出血するようになります。
歯磨きをしたときに
少し出血する程度であれば
まだ軽度ですが、
何もしていないのに
出血したり、
血に膿が混じっている場合は
かなり進行している状態です。
血の量が多かったり
血が止まりにくい場合は、
腫瘍や血液の病気の
可能性もあります。
5、歯がぐらつく、抜ける
歯は歯ぐき(歯肉)の内側にある
歯槽骨という骨によって
支えられています。
さらに歯根膜という繊維が
歯の根っこを覆うセメント質と
歯槽骨をがっちり結びつけているため、
簡単に抜けることはありません。
しかし、
歯周病が進行すると
歯槽骨が溶けて歯ぐきが後退し、
歯の根元が
どんどん露出していきます。
歯石は歯と歯ぐきの間で大きくなり、
すき間を広げていきます。
支えるものがなくなった歯は、
最終的に抜けてしまいます。
歯がぐらつくというのは、
歯槽骨が溶け始めていることを
意味します。
ここまでが
歯周病の際に出やすい症状で、
飼い主さんに
日頃からチェックしてもらいたい
ポイントです。
これ以外に、
原因が歯周病の可能性が高い症状が
2つあります。
6、顔(頬)が腫れている
歯周病が進行すると出てくる膿は、
歯周病菌や
それを排除するために戦った
免疫細胞の死骸です。
膿が局所的に溜まったものを
膿瘍(のうよう)と言って
歯ぐきが大きく腫れた状態になります。
細菌感染が広範囲に渡ると
化膿性炎症となり、
顔が腫れてしまいます。
溜まった膿が
皮膚を破って出てくる
「眼窩下膿瘍」(がんかかのうよう)は、
皮膚病と診断されることが
少なくありません。
抗生物質を使っても
一時的な対処にしかなりませんので、
歯周病の治療をしなければ
治りません。
顔の腫れは
歯周病が進行することで起こる
可能性がありますが、
顔が腫れたから
必ず歯周病ということではありません。
腫瘍や外傷、
アレルギーなどの可能性もありますので、
できるだけ早く
動物病院で診てもらう必要があります。
7、鼻水が黄色い
上の歯で歯周病が進行すると
口と鼻を隔てていた歯槽骨が溶け、
「口腔鼻腔ろう」という
口と鼻がつながった
状態になってしまいます。
歯周病菌やそれに伴う炎症が
鼻側にも広がると
膿が混じった黄色い鼻水や鼻血、
くしゃみ、目やにが出るようになります。
鼻水やくしゃみは
呼吸器の病気が疑われがちですが、
実は歯周病が原因だった
ということが少なくありません。
ただ、腫瘍や副鼻腔炎などが原因で
出ている可能性もあります。
いずれにしても、
できるだけ早く
動物病院で診てもらう必要があります。
その他の症状やチェックポイント
普段と違う仕草をしていないかを
チェックすることで
歯周病に気づけるかもしれません。
例えば
ある時から
- 「食べるのが遅くなった」
- 「食べ方が変」
- 「ごはんを食べない」
といった食事の際の変化は
口の痛みが原因の可能性があります。
口を気にして
痛そうにしたり、
顔を触られるのを嫌がったり、
痛くて鳴いたりする場合もあります。
こういった変化に気づくためにも、
飼い主さんは
普段から愛犬の行動をよく観察して、
体を触って
異変がないか確かめるように
してあげてください。
犬の歯周病の治療
歯肉が少し赤くなっている程度の
軽度な歯肉炎であれば、
正しい歯磨きをすれば
改善する場合があります。
歯周炎に進行した場合は、
麻酔をかけて処置を行います。
歯石除去(歯石取り)
歯石を除去する場合は
- 「歯周ポケットの深さを確認」
- 「レントゲンで進行度を診断」
- 「歯面や歯周ポケット内の歯垢や歯石を除去」
- 「再付着を防ぐために歯の表面を研磨」
といった検査や
処置を行います。
無麻酔で
それらの処置を行うことは難しく、
表面の汚れしか取れません。
研磨を行わなければ
歯石が付きやすくなってしまいますし、
歯の裏側も含めて
しっかり検査しなければ
歯周病の進行を見逃してしまいます。
実際、無麻酔で9.3~18.2%だった
歯周病の発見率が
麻酔下では44~100%に上昇する
という報告もあります。
麻酔下でしっかり
検査と処置を行うことが
大切なのです。
抜歯
歯周病が進行している場合は
抜歯を行います。
飼い主さんとしては
「歯を抜くなんてかわいそう」
と思うかもしれませんが、
歯の根元まで広がった歯石を
歯磨きや歯石取りで
取り切ることはできませんので、
抜かなければ
歯周病は確実に進行します。
犬は人と違って
食べ物を丸飲みしますので、
歯が無くて
困ることはありません。
ダメになった歯を
無理に残せば
犬はずっと痛い思いをしますし、
歯周病菌の出す毒素によって
さまざまな病気の
原因になってしまいます。
歯周病の治療・手術費用
治療費は病院ごと、
進行度によって変わりますが、
目安として診察で500~3000円、
検査で5000~2万円、
CT検査を行う場合は
さらに2万円ほど、
全身麻酔で1~2万円ほどかかるの
が一般的でしょう。
抜歯費用は
1本500~2000円ほどで、
犬の歯は全部で42本あります。
点滴は
5000~2万円ほどで、
歯周病を治す薬はありませんが、
口臭や歯ぐきの腫れを
抑えるため抗生物質を出す場合は
2000~1万円ほどが一般的です。
歯石取りや
スケーリングという項目で
まとめて提示する病院も多く、
その場合は
2~5万円が一般的だと思います。
犬の歯周病のケア・予防法
歯周病の予防は、
一にも二にも歯磨きです。
よくウェットフードを食べている犬は
歯周病になりやすい
と言われますが、
エビデンスはありません。
それよりも
歯磨きをしているか
していないかで明らかな差が出ます。
どうしても
歯磨きができない犬の場合、
指サックタイプや
歯磨きシートも
一定の効果がありますので
何もやらないよりはいいでしょう。
デンタルケアのフードやおやつも、
商品によりますが
多少の効果は期待できます。
犬の歯垢が
歯石に変わるスピードは
人よりも早く、
2~3日と言われています。
歯磨きは少なくとも
1日1回はやるようにしてください。
最初から
歯磨きができる子はまれです。
まとめ
- 歯周病は歯の周りの組織が破壊される病気
- 顎骨の骨折や心臓病などの原因にもなる
- 進行して歯根膿瘍になってしまうと抜歯が唯一の根本治療
- 子犬の頃から歯磨きの習慣付けを
歯周病は
不可逆的な病気で、
歯の周辺組織が破壊されてしまうと
元に戻ることはありません。
歯石取りも
一時的な対症療法
にしかなりませんので、
日頃から歯磨きを欠かさないようにして、
早期発見・早期治療を心がけてください。
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