犬は家族を順位付けしているの?

公開日:2021/09/13 / 最終更新日:2024/01/10
犬の順位付け、リーダー論とは
犬を飼い始め、
しつけ本や飼い方本を読むと、
「飼い主は犬のリーダーになること」
と書かれていることがあります。
これは、犬の祖先が
オオカミであるという考えが
影響しているものと思われます。
「犬もオオカミと同じように
群れの中で順位を付ける」
という考えから、
「犬に主導権を渡さないように、
犬のリーダーになることが大切だ」
と言われ始めました。
そして、犬の行動から
飼い主が犬からどう見られているか、
犬に順位付けされていないかを
見極める行動は何か
に注目するようになりました。
しかし、犬の学習の仕方や
習性を考えると、
必ずしも
「順位付けをしているとはいえないのではないか」
という意見が出てくるようになり、
専門家でも
犬の順位付けについては
意見が分かれています。

オオカミの順位付け
野生の中で生きているオオカミは、
生き残るために群れを作ります。
生き残るには、
子孫を増やし
危険を回避する必要があります。
生き残るため群れの中で、
強さを争って
もめ事を起こすことは
オオカミたちにとって不利になる行動なのです。
そこで、オオカミたちは
1匹のオオカミを群れのトップにして、
そのトップについて行くと
食事が得られたり
危険を回避できたりする事を学びます。
また、トップの下にも2番目の位や
3番目の位などがあります。
トップは、獲得した獲物を
一番初めに食べることができます。
その次が2番目。
その後に3番目という形で
おこぼれをもらっていくのです。
また、トップから遊びに誘われると
2番目や3番目たちは遊びます。
ですが、2番目からトップなど
下位のオオカミが上位のオオカミを
遊びに誘うと
上位のオオカミはそれに応じません。
こういったオオカミの群れでの行動が
順位付けになります。
オオカミの群れは、
トップが強く怖い存在だから
従っているのではなく、
トップについていくと
良いことがあるなど
損得で動いているのです。

オオカミの順位付けは犬に当てはまる?
では、犬はどうなのでしょうか?
最近の研究では、
犬はオオカミが祖先であった時代から
かなりの時を経て
イエイヌになり
環境や繁殖の工程で
性格や習慣などが変わってきました。
犬の祖先が
オオカミという見解が広く浸透し、
犬の行動を
オオカミに当てはめて考えるようになり、
「アルファシンドローム」や「リーダー」
という考えが生まれました。

アルファシンドロームとは
権勢症候群とも呼ばれる
アルファシンドロームとは、
犬が家族という群れの中で
アルファ(群れのトップ)の
立ち位置にいる事で
群れの安全を守り、
獲得した食べ物を1番に食べて、
自分の遊びたい時に
遊びを強要する行動と言われています。

リーダーという考え方
「人が犬のリーダーになりましょう!」
という言葉をよく耳にします。
では、果たしてリーダーとは
どんな人なのでしょうか?
私たちはリーダーという言葉を
「代表」「指導者」
などといった意味合いで使いますが、
オオカミのトップは、
人のリーダーのように
他のオオカミに指示を出したり、
何かを教えたりするわけではありあません。
「トップの決めた行動に従う」
これがオオカミの世界です。
決して、飼い主が犬を服従させ、
上下関係をしっかり教えさせて
支配する事なのではないのです。
オオカミの順位付けでも分かるように、
オオカミや犬は
損得で行動する動物なので
高圧的な態度を取れば
犬がリーダーと認めてくれる
わけではありません。
人と犬も主従関係ではなく、
信頼関係を築いて
犬の危険を回避してあげられる
「頼りになるやつ」にならなくてはなりません。

犬の順位付けと言われる行動の本当の意味とは?
犬同士でマウンティングをしたり、
人へ甘噛みをしたりするのは、
相手を下位に見ているわけではないのです。
犬も自分の立ち位置を確認するのに
さまざまな行動を取ります。
ですが、それが順位付けなのかと
言われると疑問がありますし、
元々がオオカミであるというだけで、
オオカミの順位付けを
犬に当てはめるのは
行動学的にも
限界なのではといわれています。
そこで、犬の習性や
学習の仕方を考えて見ると
「順位付けだと思っていた行動」も
違った見え方ができると思います。

犬同士のマウンティング
子犬の頃に兄弟犬たちと
遊びの中でマウンティングという
行動を取ったりします。
犬同士マウンティングする行為は
自然なことです。
マウンティングをされて
嫌だと意思表示する事も大切ですし、
マウンティングして
相手の反応を読み取る事も大切です。
ですが、見知らぬ犬同士が
マウンティングしたりされたりする事は
トラブルになる場合があります。
子犬の頃に
マウンティングされない方法や
回避する方法などを
学んでいない犬にとっては、
マウンティングされる事で
落ち込んでしまったりします。
また、ケンカに発展してしまう場合もあります。

犬同士の力の優劣
犬同士が小競り合いをして、
ケンカに発展してしまうことがあります。
その時、犬が相手の犬の上に乗り
押さえ込むような行動を取ったりします。
そうする事で
ケンカが終了することもありますが、
上に乗る行動が
全て犬の優劣に
つながっているかというと
違ったりもします。
犬同士が遊んでいても
お互いが順番に上に乗ったり
下にいたり
優劣とは関係なく
信頼関係を築いてる場合もあります。

テリトリー意識
いつも行く家の近所の
散歩コースではトイレの回数が多いのに、
知らない場所へ行くと
トイレの回数が少ない犬もいます。
逆に家のトイレでは
あまり回数はせず、
お外に行くと
マーキングをする犬もいます。
テリトリー意識があるから
マーキングしているようにも
感じますが、
他の犬との
情報交換の意味もあります。
尿には、沢山の情報が詰まっています。
匂いを嗅ぎ、
相手がどんな犬なのかを知って
近くに自分の情報を残すのも
犬のコミュニケーションのひとつです。

多頭飼いでのそれぞれの立場
犬同士は自然と
自分の立ち位置を確保しています。
年上の先住犬が食べているものや
遊んでいるオモチャを
年下の犬が取ってしまう。
その時、年上の先住犬に叱られたとします。
その行動が反復されると
年下の犬は
先住犬のものを奪う行動は
自分にとって不利なのだと学習していきます。
ですが、逆に自分も
何かを奪われそうになると
虚勢をはる行動を取るように
なることもあります。
また、年上の犬でも
叱らない犬もいます。
その時、年下の犬は
強がらなくても受け入れてもらえるのだと
学習したりします。
バランス良く、
受け入れられたり
拒絶されたりを繰り返して犬は
自分の立ち位置を認識していきます。

甘噛みは飼い主を試している?
犬は、相手がどこまでなら
許してもらえるのかと
試してくることはあります。
甘噛みをどこまでなら、
どのくらいの力加減なら
許してもらえるのか
試してくることもあります。
犬同士がプロレスごっこのような
遊びをしている時に
お互い甘噛みをして
力加減を確認しています。
人への甘噛みも同じで、
遊びの一環として
甘噛みがあります。
楽しくなりすぎて
エスカレートしてしまうと
つい強くなってしまう
事もあるでしょう。
その時は、遊びを終わらせて
クールダウンする時間を
作ってみるのも良いでしょう。
甘噛みをするからと言って、
下位に見られているとは限りません。

散歩の引っ張りは犬がリーダーと勘違いしている?
散歩中、リードを引っ張る行為も
犬が上位にいるからとは言えません。
早く楽しい目的地に行きたいから
引っ張ってしまう場合もあります。
もしくは、排泄したくて
我慢しきれず
急いでいるのかもしれません。
急に引っ張るのは、
怖い音や苦手なことから
逃げたいからかもしれません。
ですから、リードを引っ張る行為全てが
順位付けとは言い切れません。
しかし、リードを引っ張る行為は
犬の首や身体に負担がかかり
危険な事もあります。
なので、リードを引っ張らなくても
大丈夫だと犬に伝える必要があります。
リードを張らずに歩く行動は、
犬にとって得なんだと教えてあげましょう。

物をくわえて放さないのは人を下位に見ている?
物をくわえて放さない犬もいます。
また、取ったものを守ろうと
唸ったりする犬もいます。
自分のものを渡したくないと
行動している時、
犬は人を下位に見ているから
このような行動をとるとは限りません。
自分にとって大切なものを
奪われる事が多い犬は
どうしたら奪われないのか考えます。
その時、唸ってみたり
咥えて離さない行動を取ってみたら
奪われなかったといった
経験があるのかもしれません。
咥えたものを離すことが
良い事なのだと学習すると
このような行動は取らなくなるでしょう。

人へのマウンティングは?
人へマウンティングする犬もいます。
先ほども述べましたが、
マウンティングは遊びや
コミュニケーションの一環とも考えられます。
しかし、この行為が
常習化してしまうと良くないので、
別の遊びを提案してあげて
回避してあげると良いでしょう。
ぬいぐるみなどへの
マウンティングも同じく
繰り返してしまうと癖になってしまうので、
ぬいぐるみを取り上げて
別の遊びを一緒にしてあげると良いでしょう。

犬の順位付けと好きな人ランキングの違い
よく、家族の中で
「お母さんの言うことは聞くけど、
お父さんの言うことは聞かない」など、
家族内での犬の反応が違うことから、
犬は順位付けをしている
と思われる方が多いと思いますが、
実際に犬は
あまり順位など考えてないと言われています。
これまで「うちの犬は主人を下に見ている」など
上下関係があると思われてきました。
しかし、犬は
誰にどのような行動を取ったら得なのか、
損するのかと
考えて行動をしています。
「お父さんよりお母さんの方が好き」
という犬の行動と
オオカミの順位付けは
イコールではありません。
お母さんの方が
自分にとって得なことが多い、
お父さんと
お母さんなら
お母さんの方が良いと
犬が考えて行動しているのです。

まとめ
犬の順位付けで主従関係を正しく築くには
犬と人は主従関係ではなく
信頼関係で成り立っているのが
理想的なのではないでしょうか?
あなたが会社員だとします。
一人は高圧的で厳しく、
力で従わせようとする上司。
もう一人は、
部下である自分の主張を理解してくれて
仕事ができると
必ず評価してくれる上司。
どちらのタイプの上司と
一緒に働きたいと思いますか?
犬にとって、
飼い主さんが
自分を理解し褒めてくれる、
一緒にいれば安心できる存在。
それが「犬のリーダー」ではないでしょうか。
犬の順位付けを理解して
愛犬の行動をよく見てみましょう!
オオカミの順位付けと
犬の行動をしっかり理解して、
どんな「犬のリーダー」になるべきなのかを
家族で話し合ってみるのも
良いかもしれませんね。
全ての問題行動と呼ばれる
犬の行動を
順位付けによるものだと
断定するのではなく、
なぜ犬がそのような行動を
取らざるを得ないのかを
しっかり理解して
向き合ってもらえたらと思います。
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