犬の認知症!症状・原因・治療法・チェック方法など
公開日:2022/10/14 / 最終更新日:2024/04/02
犬の認知症とは
物を正しく認識したり、
記憶したり、
判断したりする能力が障害され、
著しく日常生活に
支障をきたした状態を
認知機能障害といいます。
犬の脳も年齢ともに
変化するため、
高齢になると
少しずつ認知機能は
衰えていきますが、
加齢による
生理的な脳の変化に留まらず、
脳に病的な変化が生じて
認知機能障害が起こったものが
認知症です。
犬の認知機能障害は
さまざまな原因で起こりますが、
人で一般的に見られる
アルツハイマー病と類似した
犬の認知症(認知機能不全症候群)
について解説します。
認知症になりやすい犬種・年齢
多くは9歳齢以上の
高齢犬で発症します。
国内では11歳齢から発症し、
13~15歳齢で
増加することが知られています。
日本では
柴犬といった
日本犬での発症が
約80%を占めていますが、
その他にも、
ビーグル、ヨークシャーテリア、
シーズー、マルチーズなど、
さまざまな犬種で
発生する可能性のある病気です。
犬の認知症の症状
- 注意力の欠如
- 無気力
- 無目的な徘徊
- 睡眠や起床のサイクルの障害
- 排泄の失敗
- 狭いスペースに入り込む
- 家族を認識できない
- 性格の変化
- 難聴
- 過剰に吠える
- 夜鳴き
このような症状は、
老化の症状として
見られることもあり、
認知症かどうかの区別が
難しいことも多いですが、
生活に支障をきたすほど
顕著に見られる場合は、
認知症を疑います。
また、高齢の動物では
- 「関節疾患」
- 「神経疾患」
- 「内分泌疾患」
などを同時に
患っていることもあり、
他の病気による症状でないかを
慎重に判断する
必要があります。
犬の認知症の原因
認知症の犬では、
神経細胞に「アミロイドβ」と呼ばれる
タンパクが蓄積していることが
知られています。
これは、
人のアルツハイマー病の
原因の一つであり、
犬の認知症も
人のアルツハイマー病と似た
病気と推測されています。
神経細胞や血管に
アミロイドβが沈着したり、
ミエリンと呼ばれる
神経の情報を早く伝える
ケーブルの一部が障害されることが
発症の引き金となっていると
考えられます。
また、酸化ストレスにより
産生される「活性酸素」や「フリーラジカル」が
神経細胞にダメージを引き起こし、
症状をより悪化させる
原因となっています。
犬の認知症の検査・診断方法
Rofinaの評価基準
診断には
家庭での注意深い症状の
観察が手助けとなります。
前述の症状のように、
認知症でよく見られる症状を
分類して点数化し、
どの程度認知症の疑いがあるかを
評価する方法があります。
代表的なものとして、
Rofinaの評価基準を紹介します。
点数がより高い方が
認知症の疑いが強くなり、
Fastらは、10点(痴呆スコア0)は正常、
11~15点(痴呆スコア1~5)は予備群、
16点以上(痴呆スコア5<)を認知症として
研究を行っています。
このような診断方法は、
自宅でも簡単にできるため
有用です。
ただし、
確定的な診断を下せるものでは
ありません。
これまでの経過や画像検査、
血液検査などを組み合わせ、
他の病気がないかを調べた上で
総合的な診断が必要となります。
MRI(画像検査)
認知機能障害を起こす可能性のある
他の脳の病気との鑑別のために、
MRIと呼ばれる
画像検査が行うことがあります。
認知症を発症している犬では
- 「脳の萎縮」
- 「脳室と呼ばれる脳の中の水たまりの拡大」
- 「小さな脳梗塞」や「出血」
などが見られることが
知られていますが、
通常は脳の中に
大きな異常は認められません。
一方で、脳腫瘍など
他の脳の病気では、
MRI検査で脳の中に
異常が見つかることが多く、
認知症と区別されます。
犬の認知症の治療方法
今のところ、
認知症を完治させる
特効薬は残念ながらありません。
認知症の治療は
- 「行動治療」
- 「食事療法」
- 「薬物療法」
の3つの手法があります。
これらの治療を組み合わせて、
可能な限り進行を遅らせ、
家族と動物の生活の質を
保つことが一番の目標となります。
特に動物と
その家族にとって
- 「異常な興奮」
- 「夜鳴き」
- 「徘徊」
などは、
一緒に生活するなかで
大きな問題となります。
なるべく動物を落ち着かせ、
不安を取り除き、
夜眠れるようにすることで
お互いのストレスを
軽減することにもつながります。
薬物療法については、
神経の伝達を強化する
ドーパミンや
アセチルコリンの濃度を高める薬が
使われることがあります。
夜鳴きや徘徊などが
日常生活に問題となる場合は、
鎮静薬や抗うつ薬を
使うこともあります。
どの薬を使用するかは、
症状や動物の状態によって
異なるため、
主治医と相談することを
お勧めします。
また、高齢犬では
認知症以外の
- 「関節疾患」
- 「循環器疾患」
- 「内分泌疾患」
などを同時に
患っていることが多いため、
これらのケアも
併せて行うことで
症状が軽減できることがあります。
家庭でできる犬の認知症ケア
家庭での行動治療を行うことは、
動物の不安を取り除き、
ストレスを和らげ、
症状を少しでも緩和するためにも
重要な要素となります。
不必要な叱責はしない
過剰な夜鳴きや徘徊、
排泄の失敗など、
どうしても
動物を叱りたくなるかもしれません。
しかし、動物は
意図的に行っているわけではなく、
不必要な叱責は、
犬にとって
ストレスを増やす
原因となります。
家具やトイレの位置を変更しない
物の場所を
認識する能力が低下しているため、
なるべく家具の位置や
トイレの場所などは
変更せずに
愛犬がこれまで通りの
生活ができるように
配慮が必要です。
適度に遊ばせる
散歩や外で
適度に遊ばせることも
脳への刺激となり、
症状の進行を
遅らせることにつながります。
飼い主自身のケアも忘れない
老人の介護と同様に、
度重なる問題行動は
介護する家族にとっても
心身的な負担となることが
少なくありません。
夜鳴きによる近所迷惑に
頭を悩ませるケースも
多く遭遇します。
そのような時は、
積極的にかかりつけの
獣医師に相談することを
お勧めします。
行動治療の他に、
前述の薬物療法を
必要に応じて組合わせることで
症状をうまく
コントロールできることもあります。
相談するだけでも
気持ちが楽になるかもしれません。
すべて1人で
介護しようとせずに、
疲れ切る前に、
近所の動物病院や
ペットシッターに預けるなどして、
たまには手を抜くことも
上手に認知症の愛犬と
付き合っていく上で
非常に大事です。
犬が認知症になった場合の安楽死について
犬の認知症は
長期的な介護が必要となり、
家族にとっても
動物にとっても
心身の負担となることがあります。
家族が疲弊し、
日常生活自体に支障をきたすことも
少なくありません。
愛犬が家族をまったく
認知できなくなり、
しっかりとした栄養も取れず、
寝たきり状態で
床ずれができ、
衛生的に管理ができないといった場合は、
とても悲しいですが、
安楽死について
考える時期かもしれません。
最期まで責任を持って
介護を全うしたい
という思いも大切ですが、
動物や家族にとって
さらなる苦痛を避ける
選択肢も時には必要です。
まとめ
- 犬の認知症は犬だけでなく飼い主自身のケアも大切
- 脳に病的な変化が生じ、認知機能障害が起こったものが認知症です
- 多くは9歳齢以降のシニア犬で認知症を発症します
- 日本犬での発症が約80%ですが、どの犬種も認知症になり得ます
- 診断には、家庭での注意深い症状の観察が手助けになります
- 犬の認知症のケアには、飼い主自身のケアも忘れてはいけません
認知症は高齢犬で
問題となることの多い病気であり、
完治が難しい病気です。
病気について理解し、
正しく動物と接することで、
家族と動物にとって
より良い時間を築くことができます。
スポンサーリンク
「シニア犬」カテゴリーの関連記事
「犬の健康寿命」カテゴリーの関連記事
「犬の健康維持」カテゴリーの関連記事
「犬の認知症」カテゴリーの関連記事
「老犬のしつけ」カテゴリーの関連記事
「老犬の食事」カテゴリーの関連記事