犬の膵炎(すいえん)!症状や、原因、治療って?
公開日:2024/04/17 / 最終更新日:2024/04/17
犬の膵炎とは
膵炎(すいえん)は、
膵臓に炎症が起こる病気です。
膵臓は
食べ物を消化するための
消化酵素を分泌する臓器ですが、
膵炎になると
その消化酵素が
膵臓そのものを消化してしまい
炎症が起こります。
『家庭どうぶつ白書2019』によると
膵炎は
犬の病気として15番目に多く、
年間の診療回数が
慢性腎臓病に次いで
多いのも特徴です。
突然発症し
急性に進行することで
入院が必要になることも多く、
入院理由では
2番目に多い病気です。
膵炎は
「急性膵炎」と「慢性膵炎」にわかれ、
犬の場合は
多くが急性膵炎です。
膵臓の役割
膵臓には
大きく二つの機能があり、
インスリンなどの
ホルモンを分泌する
「内分泌機能」と
消化酵素を分泌する
「外分泌機能」にわかれます。
内分泌機能の異常として
「糖尿病」、
外分泌機能の異常として
「膵炎」が代表的です。
膵臓で分泌される
消化酵素には、
タンパク質を分解する
「トリプシン」、
炭水化物を分解する
「アミラーゼ」、
脂質を分解する
「リパーゼ」
などがあります。
これらが
十二指腸に流れ出て
食べ物を消化します。
消化酵素は
膵臓自体を消化しないよう
膵臓内では
機能(活性)しないように
分泌され、
十二指腸に出た際に
別の成分と反応して
機能します。
しかし、
消化酵素が
膵臓内で機能してしまうと
膵臓が消化され、
炎症を起こして
「膵炎」となるのです。
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急性膵炎
急性膵炎は
突然発症して
炎症が急速に進行する病気で、
強い痛みを伴います。
軽度であれば
自然治癒することも
多くありますが、
重症化すると
合併症を起こし、
ショックや多臓器不全によって
死に至ることもあります。
慢性膵炎
慢性膵炎では軽度、
もしくは無症状の炎症が
長期間にわたって起こります。
急性期は
急性膵炎と
同じ症状を起こしますが、
急性膵炎に
完治の可能性があるのに対し、
慢性膵炎は
細胞が壊死して
硬くなる
線維化が起こり、
機能が元に戻ることはありません。
膵臓が壊死して
機能が低下すると、
「膵外分泌不全」につながります。
膵外分泌不全
膵外分泌不全は、
膵臓から
消化酵素が分泌されず、
十二指腸で
正常な消化ができなくなってしまった
状態を指します。
慢性膵炎が
原因の一つとされており、
シェパードの
遺伝性疾患としても
知られています。
急性膵炎では
起こりません。
下痢や消化できない脂肪によって
黄色便(脂肪便)が見られ、
十分な栄養吸収ができないため
体重が減少していきます。
草や石を食べたり、
食糞をしたりすることもあります。
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犬の膵炎の症状
症状で
膵炎とわかる
特徴的なものはありません。
初期症状では、
元気が無くなる、
嘔吐や下痢、
腹痛がみられます。
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痛い腹部を
床から遠ざけようと、
前足を伸ばして
胸を床につけ、
お尻を突き上げる
「お祈りポーズ」を
することもあります。
そのほか
以下のような症状がみられます。
- 食欲低下
- 震え
- 衰弱
- 脱水
- よだれ
- 黄疸
膵炎の末期症状
重症化すると
下痢や嘔吐に
血が混じることがあり、
ぐったりして
呼吸困難になります。
併発した病気によっても
症状は異なります。
慢性膵炎では
軽度の下痢や
嘔吐がみられますが、
急性期になると
急性膵炎と同じ症状が
みられるようになります。
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犬の膵炎の予後・致死率
軽度の膵炎であれば
自然に治ることもあります。
急性膵炎は
致死率が高く、
慢性膵炎では
膵外分泌不全を併発してしまうと
機能回復できないため、
生涯にわたっての治療が
必要になります。
重症化すると
肝臓や腎臓など
周囲の臓器に
炎症が広がってしまうことがあります。
全身に血栓ができる
DIC
(播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)
という状態を併発することもあり、
多臓器不全で
死に至る可能性が高まります。
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犬の膵炎の原因
人の膵炎では
アルコールや胆石が
主な原因ですが、
犬の場合は
明らかになっていません。
ほとんどが
特発性ですが、
ミニチュアシュナウザーや
ヨークシャーテリアは
遺伝的に
脂肪代謝異常を起こしやすく、
膵炎の
好発犬種として
知られています。
環境要因として
脂質に関係があると
考えられており、
以下の条件に
当てはまる犬は
注意が必要です。
- 日常的に高脂肪食を食べている
- ごはんを好きなだけ食べている
- 人の食べ物を食べている
- ゴミ箱の残飯をする
- 肥満
- いろいろな食事を食べている
糖尿病や
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、
甲状腺機能低下症といった
内分泌疾患を
患っている犬は
高中性脂肪血症を併発して
発生確率が
高くなると考えられています。
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他のリスク要因として、
高カルシウム血症、
薬剤なども含まれます。
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犬の膵炎の診断方法
膵炎に
特異的な症状は無いため、
飼い主さんが
ご家庭で
判断することはできません。
問診から
状態や既往歴を伺い、
膵炎を疑う
臨床症状がある場合は
腹部触診を行ないます。
膵炎の可能性があると
判断した場合は
血液検査や
画像診断を行ないます。
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血液検査
血液検査では
トリプシンの濃度を調べるTLIや
リパーゼ(膵リパーゼ)の濃度を調べる
PLIなどがあります。
TLIは
膵炎で特異的に
上昇するものの
正常化も早いため、
PLIと併用することで
信頼性が高まります。
最近では
院内で確定診断ができる
スナップや外注検査を行います。
PLIは
信頼性が高いとされていますが
膵臓以外の
炎症疾患の可能性もあり、
急性・慢性の
区別もつかないため、
必ず
画像診断を行ないます。
また、
慢性で
膵臓が壊死している場合は
PLIが
正常値と出る場合もあります。
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画像診断
画像診断では
腹部超音波検査(エコー検査)で
炎症の状態を確認しますが、
事前に
レントゲン検査
(X線検査)を行うことで
腸閉塞など
膵炎以外の可能性を除外します。
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CT検査では
重症度を確認することができますが、
全身麻酔のリスクがあります。
重症度の変化は
体内の炎症反応を調べる
CRPを継続して
調べることで確認しますが、
急性膵炎の場合に限ります。
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犬の膵炎の治療方法
犬の膵炎は
原因が特定できないため
直接的な治療法はなく、
対症療法が
中心になります。
軽症であれば
自宅で
食事療法にできますが、
急激に
悪化する場合もあるため
飼い主さんは注意が必要です。
急性膵炎では
死亡率が高く、
入院して
集中治療を行います。
炎症を抑える
薬剤などを
使用することが多いです。
治療は
- 「輸液」
- 「痛み(疼痛)の管理」
- 「栄養補給」
が基本になります。
状態に応じて
吐き気止め(制吐剤)や
感染症対策の
抗生物質を使用します。
嘔吐や下痢で
脱水がある場合は
輸液点滴で水分を補い
膵臓の血流を確保します。
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慢性膵炎の場合も
対症療法を行ないます。
膵外分泌不全を起こしている場合は
副次的にビタミンB12の
吸収ができなくなるため
皮下点滴で補います。
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食事療法
嘔吐がある場合は
12~24時間の
絶飲絶食を行ないます。
食欲がない場合は
痛み止めや
吐き気止めで改善を促し、
低脂肪の療法食を与えて
早期に
食事療法を始めます。
絶食が長期になる場合は
チューブを用いた
経管栄養法を行ないます。
食事療法をする際、
手作り食は
栄養バランスが難しいため
オススメしません。
獣医師の指示に従って
療法食や
低脂肪な食材が使われた
総合栄養食を
与えるようにしてください。
低脂肪な食材としては
以下が挙げられます。
- 鶏のササミ
- 白身魚
- 豆腐
- 卵
- 米
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膵炎の治療費
治療費は
病院ごとに異なります。
平均値として
『家庭どうぶつ白書2019』を参考にすると、
診療回数の平均が7回で、
年間の診療費は
平均20万3186円です。
高額治療が
平均を上げますので、
中央値で見ると
5万6700円となっています。
ただ、
重症度によって
かなり差がありますので
参考値としてください。
犬の膵炎の予防方法
犬の膵炎は
突発性もしくは
遺伝性であることがほとんどで、
原因がわからないため
確実な予防方法はありません。
しかし、
リスクを減らすために
肥満にならないような
バランスの良い食事と
適度な運動を行うことが大切です。
特に
高脂肪の食事は
避けるようにしてください。
すでに肥満になっている場合は
早急にダイエットをしましょう。
肥満かどうかはBCS
(ボディコンディションスコア)という指標で
飼い主さんが
判断することもできます。
犬の4分の1は
肥満という
データもありますので、
注意してください。
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まとめ
- 急性膵炎は突然発症して急速に進行する危険な病気
- 慢性膵炎は気づきにくく、膵臓は壊死すると回復しない
- 原因は不明だが肥満や高脂肪食がリスクを高める
- 直接的な予防法はなく、日々の食事管理が大切
犬の急性膵炎は
急速に悪化して
死に至る場合がある
危険な病気です。
症状は下痢や嘔吐など
判別しにくく、
慢性膵炎の場合は
無症状の場合もあるため
早期の発見が重要です。
食事管理に気をつけ、
定期的に
血液検査を含む
健康診断を行うようにしてください。
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