犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)症状・治療法・かかりやすい犬種って?
公開日:2022/12/08 / 最終更新日:2024/01/10
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは
膝蓋骨脱臼は、
滑車から
膝蓋骨が外れる状態を指します。
「パテラ(patella)」とは
膝蓋骨を示す解剖用語で、
厳密には
膝蓋骨脱臼を表す言葉ではありませんが、
日本では
「パテラ=膝蓋骨脱臼」
とされることが多いようです。
膝蓋骨脱臼(パテラ)になりやすい好発犬種
膝蓋骨脱臼は、
- ポメラニアン
- トイプードル
- チワワ
といった小型犬で
多く発生します。
しかし、ジャックラッセルテリア、
柴犬などの中型犬や
フラットコーテトレトリバー、
グレート・ピレニーズなどの大型犬でも
発生しますので、
小型犬の疾患ではありません。
※膝蓋骨
(しつがいこつ、英: Patella )は、
三角形の骨で、大腿骨に繋がっており、
膝 の前面を保護している。
人体では、
最も大きな種子骨である。
その形状から、
膝の皿とも呼ばれてます。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の種類
脱臼は大腿骨から内側に外れる
「膝蓋骨内方脱臼」と、
外側に外れる
「膝蓋骨外方脱臼」、
または
どっちにも外れる
「両側性膝蓋骨脱臼」があります。
内方脱臼が多いですが、
外方脱臼、両側性脱臼も
起こることがあります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状
犬の膝蓋骨が脱臼を起こすと、
さまざまな症状が現れます。
ここでは小型犬で多く遭遇する
膝蓋骨内方脱臼について
説明します。
膝蓋骨脱臼は
4つのグレードに
分けられていますが、
以下の2点を
念頭に置いていただければと思います。
- グレードが上になれば必ず症状が激しく現れるとは限らない
- グレードだけで治療方法が決められるとは限らない
グレード1
通常は脱臼を起こしていません。
膝蓋骨を手で外すことはできますが、
膝をまっすぐにすると簡単に戻ります。
たまにしか外れませんが、
脱臼した時に痛がったり、
足を上げたりといった症状が
出ることが多いです。
グレード2
日常生活で外れたり戻ったりを
自然に繰り返してます。
診察時に一番出会うことの多い
グレードです。
このグレードは
ひざ関節を構成する骨
(大腿骨・脛骨・膝蓋骨)をつないでいる
靭帯や筋肉、関節がゆるい状態だと
イメージしてください。
しかも内側にねじれやすい膝を
抱えています。
そのため、ジャンプしたり、
階段を登ったり、
横になったりといったさ
まざまなシーンで脱臼を
繰り返しています。
脱臼するときには痛がったり、
足を上げたり、
「コキッ」っと音がしたりと
さまざまな気づきがあることも
多いですが、
ワクチンやその他の診察時に
獣医師から
指摘されることも多く、
無症状の犬もいます。
膝蓋骨脱臼の状態を現した骨の模型。
左から、「正常」
「軽度脱臼で脛骨はねじれていない」
「重度な脱臼で脛骨もねじれている」
グレード3
常に脱臼している状態です。
膝蓋骨は指で戻すと
滑車の上に乗りますが、
離すと再脱臼してしまいます。
このグレードは
グレード2のように
脱臼時に起こる痛みはありません。
しかし、常に膝が
ねじれている状態なので、
歩行がぎこちなかったり、
足がまっすぐ
伸ばせなかったりします。
ひざ関節のこわばりが起こり、
放っておくと
正常な歩行が
できなくなることもありますが、
日常生活に支障がない犬もいます。
ねじれが重度だと
膝の中にある半月板や
十字靭帯に負担が掛かり、
膝を痛がります。
骨の成長が続く
子犬でこの状態は、
将来的に重度な膝の障害を
発生する危険性があります。
グレード4
常に脱臼しており、
指でも戻りません。
症状は
グレード3と同じですが、
大腿四頭筋は硬くなり伸びません。
硬くなった筋肉が
膝蓋骨を元に戻せない理由です。
筋肉の伸縮能力が
無くなっているので
膝がさらに伸ばせなくなり、
歩くことが困難な犬が多いです。
しかし、不思議なことに
このグレードでも
日常生活に支障なく
歩行できる犬もいます。
グレード3と同様に、
子犬の場合は
重度な歩行障害が起こる
危険性があります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の原因
根本的な原因は不明です。
小型犬に多いので
遺伝が背景にあるのではないかと
いわれていますが、
結論は出ていません。
急に痛がった場合は、
膝蓋骨を左右から支えている
靭帯の損傷が原因で
脱臼が始まっていることもあります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療法
病院でグレード1と診断された場合、
しかも痛みを数回しか
経験してない場合は
安静と痛み止めの服用で
改善するかもしれません。
レーザー治療が
関節炎に有効であるとの
報告もありますが、
レーザーが膝蓋骨脱臼そのものを
治すことはありません。
手術の必要性や自然治癒の可能性
自然に治る子は
残念ながらかなり限られます。
外傷性と思われ、
グレード1で止まっている場合は
自然に脱臼しなくなる
可能性がありますが、
グレード2になると
自然治癒は難しいと思われます。
そのため
膝蓋骨脱臼の治療は
手術を行います。
どのタイミングで手術をするか、
外科医によってもさまざまです。
グレード2以上で痛がったり、
足を上げたりする子は
手術した方が
良いといわれていますが、
グレード1でも
症状がある犬は
手術した方が良いと思われます。
特にグレード4は
かなり足に負担をかける
手術となるため、
できればグレード4になる前に
手術した方が良いと思われます。
ただ、グレードの説明でも触れましたが
症状の無い子もいるため、
手術に踏み切るタイミングは
飼い主さんと執刀医との相談で
決定することが多いのが現状です。
治療にかかる期間
手術をする場合は
1週間ほど入院して自宅に戻ります。
その後
定期的に通院し、
術後3~6カ月で検診終了となる
場合が多いです。
軽度な場合以外、
膝蓋骨脱臼は治ることはありませんが、
症状が特に無い場合は
通院の必要も無いことがあります。
慢性的に外れる場合は、
通院が長期になることもあります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)は獣医さんとの連携を
愛犬が初めて
後ろ足を上げた場合、
膝蓋骨脱臼の可能性もありますが、
骨折などの
可能性もありますので
動物病院を受診してください。
ここでは膝蓋骨脱臼で
足を上げた場合の対処法を説明します。
膝蓋骨は
膝が伸びているときに戻しやすいです。
自宅で
膝蓋骨が外れたかもと感じたら、
まず膝を伸ばしてみてください。
それだけで戻ることも多いです。
膝を伸ばすだけで戻らない場合、
膝を伸ばした状態で
外れている膝蓋骨を指で戻す、
脱臼と一緒に
内側にねじれた脛骨を
外側にねじるなど方法はあります。
これは一時的な対応ですので、
あまり繰り返すようなら
今後の対応は
かかりつけの獣医師と相談してください。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防法
蓋骨は膝が伸びている時に
外れやすい傾向にあります。
そのため飼い主さんの足もとで
ピョンピョンと飛んだり、
ジャンプをしたり、
階段の昇り降りが多い犬は
定期的に膝のチェックをしてもらうと
良いでしょう。
あまり激しく上記のことを
させないようにするのも
予防策の一つだと思われます。
まとめ
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)はどのグレードでも治療が大切
- 膝蓋骨脱臼は滑車から膝蓋骨が外れた状態のこと
- 小型犬だけでなく、どの犬種でもなり得ます
- 膝蓋骨脱臼は4つのグレードに分けられています
- どのグレードでも症状があったら治療対象になります
膝蓋骨脱臼は
犬で多く認められる
整形外科疾患です。
放置しておくと
日常生活に支障が出る場合もあります。
愛犬の歩き方に不安を覚えたなら、
まずは動物病院で見てもらってください。
特に子犬の場合、
放置すると
取り返しのつかない状態まで
膝が悪化することがあります。
子犬を飼ったら
近所の動物病院を受診し、
早めに
膝のチェックしてもらってください。
もし膝蓋骨脱臼と診断されても、
生涯支障のない犬もいますので
かかりつけの先生と
よくご相談していただき、
その子に合った治療や
生活環境の整備などを
決めていただければと思います。
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