犬の脳腫瘍!初期症状~原因、治療法は?

公開日:2024/10/08 / 最終更新日:2025/02/12
犬の脳腫瘍とは
腫瘍(しゅよう)とは、
細胞が自己増殖して
塊になった
体内の「できもの」のことです。
腫瘍には
良性と悪性があり、
悪性は
増殖し続けて
転移や浸潤(※)が
見られるようになります。
悪性腫瘍は一般的に
「がん」と呼ばれます。
脳腫瘍は
頭蓋骨の中にできた腫瘍のことで、
頭蓋骨内の組織から発生した腫瘍は
「原発性」、
がん細胞が他の部位から
転移・浸潤してできた場合は
「二次性(転移性)」と呼びます。
原発性は
良性と悪性に分かれますが、
良性も脳を圧迫することで
神経症状を起こすため、
脳腫瘍では
「良性だから問題ない」
とはなりません。
脳腫瘍は
できる場所が「脳組織」か
脳を包む「硬膜」かでも分類され、
前者を「脳実質内腫瘍」、
後者を「脳実質外腫瘍」と呼びます。
それぞれ
以下のように
できる部位によって
さらに細かく分類されます。
※浸潤(しんじゅん)
がん細胞が周りの組織を壊しながら、
水がしみ込むように拡大していくこと。

脳腫瘍の中では
「髄膜腫」が多く見られます。
脳腫瘍ができやすい犬種
犬の脳腫瘍は
高齢になるほど多くなり、
犬の長寿化に伴って
発生数も増加傾向にあります。
犬種や年齢、性別に関係なく
すべての犬で
起こる可能性がありますが、
ゴールデンレトリバーやスコティッシュテリア、
オールドイングリッシュシープドッグ、コリー、
パグやボストンテリアなどの短頭種は
多い傾向があるとされています。

犬の脳腫瘍の症状
脳腫瘍は
できた場所によって
さまざまな神経症状が起こりますが、
ある程度の大きさになるまで
明確な初期症状が
見られない傾向があります。
多くは
シニア犬(老犬)で
「てんかん発作」が起こり、
進行するにつれて
発作の頻度も多くなります。
他にも
腫瘍ができた場所によって
以下のような症状が
見られる可能性があります。
- 嘔吐
- 食欲不振
- 物にぶつかる
- 性格や嗜好の変化
- 視覚障害・聴覚障害
- 眼振(眼球が上下左右に振れる)
- 同じところをくるくる回る
- ふらつく、立てない
- 歩き方の異常(跛行、ナックリング)
- 斜頸(頭が斜めに傾く)
- 散歩に行きたがらない
- 痛みで鳴く
- 徘徊する(認知症のような症状)
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水頭症を併発すると
頭がドーム状に膨らんだり
(アップルヘッド)、
目が飛び出したりといった
外見の変化が見られます。
腫瘍が大きくなると
脳圧が上昇し、
意識レベルの低下や
頭蓋骨のすき間から
脳組織の一部が脱出してしまう
「脳ヘルニア」が起こる場合もあり、
重症化すると
死に至ります。
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犬の脳腫瘍の原因
脳腫瘍ができる原因は
明確になっていませんが、
遺伝的素因や
環境的要因が関係している
可能性があります。
環境的要因では
感染症や発がん性物質の摂取
(食事、タバコの煙、大気汚染、薬剤など)、
紫外線の曝露や
免疫機能の異常などが考えられます。

犬の脳腫瘍の治療法
神経症状などから
脳腫瘍が疑われる場合、
麻酔下でMRI検査や
CT検査などの画像診断を行います。
CTでは識別できない
腫瘍があるため、
正確な診断のためには
MRI検査が必要です。
シニア犬(老犬)では
MRIやCTの実施が難しいケースも多く、
犬の脳腫瘍は発
見されにくい病気と言えます。
血液検査やX線(レントゲン)検査で
脳腫瘍を見つけることはできませんが、
体の他の部位にも腫瘍がないか
確認するために実施します。
脳腫瘍の治療では、
- 「外科手術」
- 「放射線治療」
- 「化学療法(抗がん剤治療)」
を腫瘍ができた部位や大きさ、
浸潤状況などに応じて
選択します。
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外科手術
腫瘍を完全に
取り除くことができれば
最も有効な治療になりますが、
脳に対する手術になるため
リスクが高く、
実施できる病院も限られます。
放射線治療
放射線治療は
腫瘍ができた部位によって
有効性が異なります。
実施できる病院が限られ、
麻酔を使った
複数回の処置が必要になります。
有効性があったとしても
麻酔や副作用、通院など
犬への負担、
治療費が高額になるため
飼い主さんの経済的な負担も
考慮する必要があります。
化学療法(抗がん剤治療)
抗がん剤が有効な脳腫瘍は限られ、
副作用もあります。
脳腫瘍の治療で使用することは
まれです。
対症療法(緩和療法)
根本的な治療には
なりませんが、
緩和ケアとして
痛みや神経症状を抑えて
生活の質(QOL)を向上させるために
ステロイド剤や脳圧降下剤、
抗てんかん剤などを使用します。
脳腫瘍は
シニア犬(老犬)で起こりやすく、
治療の負担も大きいことから
苦しむ時間を短くするため
緩和療法が選択されることは
少なくありません。

犬の脳腫瘍の予後・余命
良性腫瘍で
重篤な神経症状が起きていなければ
対症療法だけで
予後は悪くありません。
悪性腫瘍では
時間と共に進行するため、
外科手術や放射線治療が
上手くいかないと
予後は良くありません。
脳実質内腫瘍と比較して
脳実質外腫瘍のほうが
生存期間は
長くなる傾向があります。

まとめ
- 脳腫瘍は頭蓋骨の中にできた腫瘍のこと
- 原発性と二次性(転移性)に分かれる
- 良性でも重篤な神経症状を起こす場合も
- 治療は難しく犬への負担も小さくない
近年、
獣医療の進歩によって
犬の脳腫瘍を治療するために
できることは増えてきました。
しかし、
高齢の犬で
多く起こることから、
犬や飼い主さんの負担を考えて
緩和療法が選択されることは
少なくありません。
愛犬に
脳腫瘍が見つかった際は、
かかりつけの獣医師と
しっかり相談をして
治療方針を
決めていただければと思います。
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