犬の網膜剥離!原因や症状、治療法って?

公開日:2024/10/11 / 最終更新日:2025/02/13
犬の網膜剥離とは
網膜は
眼球の一番内層の膜で、
視神経を介して
脳につながり
「見た画像」を認識します。
カメラでいうと
フィルムの役割を果たす
構造です。
その網膜が
剥がれてしまうことを
「網膜剥離」(もうまくはくり)と呼び、
視力低下や
失明につながる病気です。
網膜剥離の種類
網膜剥離は、
剥離が起こった動態により、
「裂孔原性」(れっこうげんせい)と
「非裂孔原性」に分けられます。
非裂孔原性はさらに
「牽引性」と「漿液性」(しょうえきせい)の
二つに分けられます。
- 裂孔原性(破裂型)
- 非裂孔原性
- 牽引性
- 漿液性(滲出型)
裂孔原性は網膜に
穴(孔)が開いてしまうことで、
水分が漏れ出し
網膜の裏側に回ってしまうことで
剥離が進みます。
非裂孔原性では、
増殖膜という膜に
網膜が引っ張られて
剥がれる牽引性と、
血管から水分が滲み出て
網膜が剥がれる
漿液性があります。
犬の網膜剥離のほとんどが
漿液性で、
牽引性や裂孔性が原因の
網膜剥離はまれです。
網膜は
剥離した部分だけ
視覚が失われるため、
一部あるいは
片眼だけ剥離した場合、
犬は
剥離せずに
見えている部分で補って
生活しようとします。
飼い主さんは
愛犬が見えなくなった状態に
気付きにくく、
片側から飼い主が現れると
驚いて吠えたり、
片側におやつを置いても
気が付かなかったり、
行動に違和感を覚えて
気付くパターンが
ほとんどです。
網膜剥離の主なタイプである
漿液性は
全身の病気の
一症状として現れることが多く、
網膜の下に
液体が溜まることで
網膜が剥がれてしまいます。
原因となる病気の
コントロールが難しい場合は
剥離が進み、
飼い主さんが気付かず
全域まで
剥離が進んでしまったり、
急に
両眼で起こったりした場合は
失明に至ります。
全域でも
剥離した期間が数日であれば
視神経とのつながりは
再生され、
視覚の機能は復活します。
ところが
剥離が数週間におよぶと、
網膜は再生されても
視神経とのつながりが
復活できず、
眼が見えないままと
なってしまいます。

網膜剥離にかかりやすい犬種や年齢
裂孔性網膜剥離は、
遺伝的要因が大きく
関与します。
裂孔性網膜剥離は主に
何らかの原因で
網膜にヒビが入り、
そこに液化した硝子体が
漏れて起こるのですが、
シーズーや
イタリアングレーハウンドなどは、
その硝子体変性を起こす
遺伝的素因を
持っています。
ボーダーコリーや
シェットランドシープドッグなどの
コリー種は
網膜の形成不全を伴う
「コリー眼」を引き起こす
遺伝的素因を持っています。
遺伝的な原因で
剥離が起こる場合、
早ければ
生後数カ月齢の若い年齢で
起こることが特徴です。
一方で
漿液性網膜剥離が
全身の病気の一症状として
現れた場合、
根本の病気が進んできたタイミングや
中~高齢で起こりやすくなります。
ただし
ウイルス感染や、
秋田犬などで起こりやすい
免疫介在性ぶどう膜炎などが
原因の場合は、
年齢に関係はありません。

犬の網膜剥離の症状
剥離が一部の場合は
見えている部分があるため、
視覚に関する症状は
分かりにくい場合が
少なくありません。
- 「決まった側のおやつやおもちゃが見つけられない」
- 「買い物してきた荷物を床に置くとつまずく」
といった
ちょっとした違和感が
積み重なってきます。
眼自体の症状としては、
剥離に伴って
網膜や硝子体に出血があると
黒目の部分が
赤く見えます。
また
「散瞳」といって
通常、明るければ
眼は光を取り込む量を
加減するため
黒目(瞳孔)は小さくなりますが、
小さくならずに
ずっと
開いたままの状態になることがあり、
妙にまぶしそうにして
眼を細めたりします。
ぶどう膜炎が先行して
起こる場合は、
まず縮瞳が見られ、
痛みや白目(結膜)の充血が
認められます。

犬の網膜剥離の原因
網膜剥離の原因は
種類によって異なります。
裂孔原性
網膜に何らかの原因で
ヒビが入り、
そこから
液化した硝子体が
入り込むことで起こります。
網膜にヒビが入ること自体
まれであり、
外傷やコリー種などに起こる
遺伝的な形成不全、
網膜炎などから続いて
起こります。
非裂孔原性(牽引性)
眼内手術後の合併症や、
眼に穴が開くような外傷、
(眼球穿孔性)
硝子体の出血などに続いて
起こります。
こちらも状況としては
特別な場合が多いです。
非裂孔原性(漿液性)
網膜剥離の
主なタイプである漿液性は、
全身の病気の
一症状として現れることが
ほとんどです。
網膜の視神経につながる
光受容体と、
網膜を形作る上皮の間に
血液や体液が溜まることで
剥離が生じます。
原因は
網膜と接する
脈絡膜の炎症です。
脈絡膜の炎症は
慢性腎不全や
副腎の腫瘍などによる
全身性の高血圧、
腫瘍やウイルス感染、
自己免疫性疾患により
起こります。
このほか原因が特定できない
特発性ぶどう膜炎も
多く見られます。
ちなみに、
脈絡膜・毛様体・虹彩を合わせて
「ぶどう膜」と言います。
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犬の網膜剥離の治療法・対処法
網膜剥離の治療は
剥離した網膜を
元の位置に戻し、
視力(視覚)を回復させることを
目的とします。
治療方法は
網膜剥離の種類や
対処によって異なり、
治療費も
それによって変わります。
裂孔原性
治療には
外科的な手術が必要です。
亀裂が大きいほど
手術後の視力の回復は
悪くなります。
ぶどう膜炎や
緑内障を併発する
場合もあるため、
ステロイドあるいは
非ステロイド性消炎剤の目薬(点眼薬)や、
抗炎症剤の目薬(点眼薬)による治療も
同時に必要となります。
失明してしまった場合でも、
最近では
硝子体手術によって
視力を回復させられる可能性が
出てきました。
しかし
手術が行える病院は限られ、
費用も高額になります。
非裂孔原性(牽引性)
治療には
外科的な手術が必要です。
ただし
物理的に網膜が
剥がされた状態のため、
手術後の視力の回復は
極めて悪いとされています。
非裂孔原性(漿液性)
まず内科的な治療が
選択されます。
網膜下に溜まった血液や
体液を取り除くため、
利尿剤が使用されます。
炎症のコントロールとして、
ステロイドの
全身投与も行われます。
飲み薬による
通院治療もできますが、
入院して
静脈点滴による治療の方が
望ましい場合もあります。
感染のコントロールとして
抗生剤の投与や、
高血圧が認められるのであれば
それらの治療も
同時に行われます。
ぶどう膜炎を
併発している場合は、
前述の目薬(点眼薬)による
治療も必要です。
漿液性網膜剥離は
上記でも触れましたが、
剥離後すぐに
治療ができ、
網膜が元の位置に戻れば
視力は回復します。
しかし
剥離が長期に渡ると
視力の回復は望めません。
視力の回復は、
根本の疾患がどれだけ
コントロールできるかによって
左右されます。
体の状態によっては
剥離が再発する
可能性もあります。
眼科の手術は、
眼の中を見るための
顕微鏡をはじめ、
特殊な器具や
機械が必要になります。
そのため、
手術のできる病院は限られ、
ほとんどの場合、
眼科専門医のいる施設への紹介が
必要になります。
飼い主さんができる対処法
網膜剥離があり
治療をしている間は
いつもより
周囲が見えにくい状態になります。
犬はもともと
視力があまり良くないため、
普段から
部屋の物の配置を覚えて
生活しています。
部屋の模様替えなどは
しないようにしましょう。
部屋は
なるべく明るくして、
テーブルの角など
愛犬の顔の位置にある
ぶつかると危ないものは
コーナークッションなどで
覆ってあげられると
より良いですね。
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犬の網膜剥離の予防法
残念ながら
飲み薬や目薬(点眼薬)で
剥離を予防することはできません。
しかし
網膜剥離は
根本に病気があり、
続発して起こることが多いため
持病をコントロールすることが
予防につながります。
高血圧など、
素因となる病気を持っている場合は
こまめに
動物病院を受診し、
飲み薬などを
欠かさないようにしましょう。
網膜剥離は
剥離から時間がたつほど
視力の回復が困難になるため、
早期の発見も
重要です。
愛犬の行動に
違和感を覚えた場合は、
なるべく早く
かかりつけの動物病院に
相談するようにしましょう。
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まとめ
- 網膜剥離の主なタイプは漿液性
- 漿液性は全身の病気の一症状として現れる
- 剥離が一部の場合は飼い主さんが気が付かないことも
- 漿液性では剥離が短ければ視力の回復が望める
犬は人間ほど
視覚に頼って生活しているわけではなく、
嗅覚や聴覚などを優位に使って
生活しています。
飼い主さんが見た目で
視覚の有無、
異常を判断することは
難しいです。
しかし、
愛犬の「見えていないかも」に
いち早く気付けるのは、
飼い主さんだけです。
愛犬の行動に
違和感を覚えた場合は、
早めに
動物病院に
相談するようにしましょう。

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