犬の気管虚脱!症状や原因、かかりやすい犬種って?
公開日:2024/08/13 / 最終更新日:2024/08/13
犬の気管虚脱とは
まず、
気管の構造形成としては、
「軟骨性気管輪(気管軟骨)」と
「膜性壁」で構成されています。
その上で気管虚脱とは、
円状の気管が扁平に
潰れてしまう疾患をいいます。
臨床現場において、
ほぼ100%の確率で
毎日のように
動物病院へ受診する疾患で、
さらには
小型犬の呼吸器疾患では
一番多いといえます。
4段階分類があり、
気管虚脱のグレード分類を
しています。
ただ、
この分類は
気管支鏡所見に基づくものであり、
レントゲンなどからの
評価ではありません。
気管虚脱グレード
- Grade 1
内腔の25%以下の狭窄。膜性壁のみ内腔へ突出 - Grade 2
同25~50%。気管軟骨の軽度扁平化 - Grade 3
同50~75%。気管軟骨縁が触知可 - Grade 4
内腔完全消失または完全虚脱。膜性壁は底部に接する
病因は現時点では
不明な点が
多いとされておりますが、
軟骨のグリコサミノグリカン、
糖タンパク質及びコンドロイチン硫酸含有量を
減少させたとの報告があります。
気管虚脱が起こる部位
気管虚脱が起こる部位としては
大きく「頚部」と「胸部」
2つに分かれます。
頚部気管虚脱は
鼻腔や咽頭、喉頭が狭い場合に、
呼吸を吸った状態で
気管虚脱が起きます。
そもそも、
気管に行くまでの通路
が狭くなることで、
気管が虚脱を起こします。
胸部気管虚脱は
気管の真ん中部分が
潰れている状態を指します。
犬の気管虚脱が起きるタイミング
気管虚脱が
起きるタイミングとしては、
「先天的要因」と「後天的要因」が
あるといわれていますが、
25%の犬では
6カ月齢未満で症状が出るため
先天的(生まれつき)が疑われています。
後天的では
「気道刺激性物質」「慢性気管支炎」
「喉頭麻痺」「気道感染症」「肥満」
および「気管挿管」などの原因により
起こることがわかっています。
いわゆる
基礎疾患が何かしら存在し、
二次的に
気管虚脱が起きる
ということなのです。
臨床経験上からも、
気管虚脱があるからすぐに
突然死などと結びつくことは
ありませんが、
気管虚脱があることで
炎症などが起こりやすくなり、
「気管支炎」「肺炎」「肺高血圧」などが
悪化することで、
突然死などに繋がる
可能性はあります。
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犬の気管虚脱の症状
初期症状は
興奮した後などに
「コホッ、コホッ」などの咳、
さらには
水を飲んだ時にむせる「カーッ」「ガーッ」
などが多いです。
そして、
口で常に呼吸をして
「ハー、ハー」していたり、
興奮した後に
「ズー、ズー」「ヒー、ヒー」などが
喉の周辺で聞こえる
場合もあります。
この場合は、
喉頭麻痺も伴い、
頚部気管虚脱になっているケースが
考えられます。
「ガー、ガー」のような
ガチョウの鳴声様 (Goose honking)と
表現されることが多いですが、
ある程度慢性化してからの
症状です。
気管が潰れている場所、犬種、
他に患っている疾患により
症状の出方が
変わることもありますので、
呼吸状態などがおかしい場合は、
気管虚脱を患っている
可能性があるということになります。
また、
咳をし続けること
で嘔吐をしやすくなることや、
痩せてしまうことなどもあります。
そして、
心臓への
悪影響にも繋がるため
注意が必要です。
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犬の気管虚脱と似たような病気
似たような病気として
以下の2つが挙げられます。
- 気管・気管支軟化症
- 気管低形成
気管・気管支軟化症
胸腔内にある気管や
気管支が狭くなる状態をいいます。
息を吸うときは
気管が開き、
吐くときに潰れてしまい、
慢性的に
炎症があると
引き起こされるとされています。
気管低形成
先天的に
気管が細い状態をいいます。
パグやフレンチブルドッグなどの
短頭種に多いです。
気管虚脱になりやすい犬種・年代
気管虚脱は
1~5才の短頭種や
プードル、チワワ、ヨークシャーテリア、
ポメラニアン、マルチーズ、
チャウチャウなどの小型犬に
比較的多くみられ、
大型犬はまれです。
犬の気管虚脱の原因
気管虚脱の原因は
「後天的」「先天的」で
異なってきます。
後天的気管虚脱の場合
ある研究では、
気管軟骨における
軟骨細胞の減少および
グルコサミノグリカンや
硫酸コンドロイチンの欠如が
病態に関与していると
いわれています。
また、
肥満による鼻炎や
鼻腔内、咽頭、喉頭の腫瘍、
喉頭麻痺に罹患している犬の場合、
気管への
何かしらの刺激により
二次的になるケースがあります。
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先天的気管虚脱の場合
生まれつきの遺伝が
関与している
可能性が高いです。
犬の気管虚脱の検査・診断方法
咳などの
臨床症状が出ている場合、
以下の検査を行います。
診断の精度としては
「内視鏡検査」>「透視検査」>「X線検査」
- X線検査(吸気・呼気)
レントゲンにより基幹が扁平化していれば診断 - 透視検査
より精密に、どの程度基幹が扁平化しているかを見る - 気管内視鏡検査
気管を中から検査し、より精度を高める
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犬の気管虚脱の治療方法
物理的に扁平化した
気管の形状を、
正常に戻す内科治療は
存在しません。
そのため、
内科治療の場合は
「正常に戻す」ことを
目的にはしておらず、
「症状の緩和」が
目的になります。
気管虚脱の治療では
主に
内科治療を施しますが、
重症度によっては
外科治療も行います。
主な内科治療方法
- ネブライザー使用
気管もしくは気管支の炎症を取り除く - ステロイド
非ステロイド・気管支拡張薬
上部気道の炎症を抑え、
症状の緩和につばげる - 鎮咳作用がある薬剤
咳がひどい場合、ブトルファールやモルヒネなど
鎮咳作用がある薬剤の使用
主な外科治療方法
手術の必要性は
各院の規定によりますが、
咳があまりにひどい場合には
適応になります。
「気管外プロテアーゼ」「気管内ステント」などの
手術がありますが、
専門の先生による手技の問題や、
気管虚脱の場所により
判断されます。
手術の場合は、
1週間くらい入院が
必要な場合があります。
家でできるケア
ご自宅でできるケアとしては
以下を心がけていただくと
良いでしょう。
首輪をハーネスに変えてもらう
乾燥しすぎると咳が出やすいので、
湿度を50~60%くらいにしてもらう
気道を過敏にさせてしまうタバコの煙、
花粉などは避けてもらう
犬の気管虚脱の予後
内科治療は
あくまでも症状の緩和、
外科手術を行った後も
定期検診が必要です。
ほとんどの小型犬は、
内科治療で緩和できます。
咳が全く出ないというのは
難しいですが、
生活に支障がない状態での
維持はできます。
しかし、
何度も再発する恐れはあります。
慢性的な呼吸器疾患は
心臓への悪影響を与えたり、
気管への悪影響により
二次的に病気を招く
恐れはあります。
外科手術であれば、
形状の根治はできます。
しかし、
全ての気管を
カバーする訳ではないので、
他の部位が
気管虚脱になることもあります。
再発率は
内科に比べれば
格段に低いですが、
麻酔をかける必要があるので、
リスクは伴います。
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犬の気管虚脱の予防
気管虚脱以外に
病気が無いかどうかを
調べておくことは重要です。
前述もしましたが、
短頭種や小型犬は
比較的
気管虚脱になりやすいため、
首輪は
ハーネスに変えるなど、
首や気管に普段から
負担がかからないようにしていただくことで
予防の一助になるでしょう。
また、
環境的な予防方法としては
「山の上など酸素が少ない場所
呼吸がしにくい状態の場所」
「湿度、温度」などは
気をつけるよう
心がけてください。
理想の湿度は50~60%くらいです。
まとめ
犬の気管虚脱は咳をしていたら早めに受診を
非常に多い疾患であり、
治療を施さないと
重症化するケースも多いので
症状が出た際には、
早期に診断を促しましょう。
最近では、
呼吸器専門の先生もいるため、
治療などに迷った場合は
専門医を訪れることも
おすすめします。
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