犬の僧帽弁閉鎖不全症!ステージ別症状や、治療法って?
公開日:2024/11/15 / 最終更新日:2024/11/15
心臓の構造と役割
ご存じの通り、
「心臓」は
血液を送るための
ポンプの役目を果たします。
構造として
左右上下の四つの部屋に分かれます。
正面から見て
左側は上が右心房、
下が右心室。
右側は上が左心房、
下が左心室と言います。
全てが全身に血液を送るための
ポンプの役割を果たしているわけではなく、
右心室の部屋が
肺へ血液を送り、
左心室の部屋が
全身に血液を送る役割を担っています。
右心房と左心房は
返ってきた血液を受け取る部屋
という理解でいいでしょう。
右心室から肺に送られた血液は、
酸素を得て
左心房に返ってきます。
左心房から左心室へ流れた血液は
全身に送られ、
最終的に
毛細血管など全身から
二酸化炭素などを受け取って
右心房に返ってきます。
そして
右心房から右心室に流れて
再び肺に送られる、
というのが
一連の血液循環です。
順序的には、
酸素を受け取った血液が
肺→左心房→左心室→大動脈
→全身の組織で酸素と二酸化炭素を交換し→
右心房→右心室→肺動脈→肺となります。
加齢で起こる弁の閉鎖不全
今回の病名で出てくる
僧帽弁とは、
左心房と左心室の間にある
弁の名前です。
心臓内には
血液が逆流しないように、
各部屋の間と
動脈に行く前に
大きな弁が四つ存在します。
僧帽弁はその一つです。
僧帽弁閉鎖不全症は、
名前の通り
僧帽弁が閉鎖せず、
血液が左心室から左心房に
逆流してしまう病態です。
僧帽弁閉鎖不全症の原因として
最も多いのは
加齢による
弁の粘液腫様変性で、
簡単に言うと
弁同士の噛み合わせが悪くなって
弁の役目を果たせず、
血液が行ってはいけない方向に
流れるということです。
粘液腫様変性では、
主に
- 「弁尖の線維層の破壊」
- 「海綿層における疎性結合組織の増加」
- 「酸性ムコ多糖類の過剰な蓄積によって弁が変形し、
弁同士の噛み合わせが悪くなる」
といったことが起こります。
これらの変化は通常、
数年以上かけ
徐々に進行するといわれています。
その他にも
僧帽弁閉鎖不全症の原因は
いくつかありますが、
今回は
一番の原因である
粘液腫様変性を元にお話しします。
僧帽弁閉鎖不全症にかかりやすい犬種、年齢
僧帽弁閉鎖不全症について、
さまざまな報告がされています。
- 北米では全体の75%が罹患している。
- アニコム損害保険によると7歳頃から罹患率が増え始め、
8歳以上は約30%、10歳以上では
約50%以上というデータが存在する。
また、好発犬種としてはキャバリア、マルチーズ、チワワ、
ポメラニアン、シーズー、パピヨン、トイプードルとしている。 - 5~8歳齢で全ての犬の約10%、9~12歳で25%、
12歳以上で35%の僧帽弁閉鎖不全症の臨床徴候が発生した。 - キャバリアは多因子遺伝形式をとることが示唆されている。
- キャバリアの1歳齢以下の10%が僧帽弁閉鎖不全症の
特徴的な心雑音を有していた。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状
初期症状は
全くありません。
僧帽弁閉鎖不全症の臨床症状で
最も多いのは、
咳(発咳)です。
僧帽弁逆流による
肺のうっ血や心臓拡大による
気管の挙上が原因とされています。
しかし、
僧帽弁閉鎖不全症の
特異的な症状という訳ではありません。
特異的ではないという意味は、
他の疾患でも起こる症状なので、
咳が出たら絶対に
心臓病というわけではないということです。
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高齢に伴い
罹患しやすいことからも、
他に慢性気管支炎などの呼吸器症状でも
同じような咳が
見られることがあるため、
鑑別が必要となります。
その他の症状では、
- 呼吸数の増加、呼吸困難
- 運動をしたがらない(運動不耐性)
- 急に倒れる(失神)
- 合併症による腹水
などがみられます。
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僧帽弁閉鎖不全症の合併症
- 肺高血圧症
- 上室頻拍
- 心室頻拍
- 心房細動
- 肺水腫
- 心嚢水(しんのうすい)
などが挙げられます。
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犬の僧帽弁閉鎖不全症各の原因
僧帽弁閉鎖不全症は、
アメリカ獣医内科学学会により
(ACVIM)
診断・治療のガイドラインが
発表されています。
以下の図からも、
症状が発症するのは
ステージC1からということが
わかります。
ステージA
心疾患のリスクのある犬種
(キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、
ミニチュアダックスフンドなどの小型犬)
ステージB
器質的異常すなわち僧帽弁の異常があるが、症状は無いステージ
B1
心臓エコー検査、レントゲン検査で心拡大がない
B2
同じ検査において、心拡大がある
ステージC
心不全により症状がある(C1急性期 C2慢性期)
ステージD
入院を施す必要がある心不全(D1急性期 D2慢性期)
※ACVIMステージの
B1とB2の心拡大があるかないかの評価は
投薬の開始となるので、
一番の問題としてとても
重要とされています。
咳が出る
僧帽弁逆流により、
左心室から左心房に逆流している血液と
肺からの正常な流れの血液とが
左心房に「うっ血」としてたまり、
心臓の拡大(心拡大)を
引き起こします。
心拡大が起こると
気管支の圧迫が起こり、
咳が誘発されます。
この時点で
肺からの血液は
心臓へ流れにくくなっており、
「肺うっ血」という
肺に血液が溜まっている状態になっています。
肺での酸素交換がうまくいかず、
さらに咳(発咳)がひどくなり、
- 「呼吸が速くなる(呼吸促迫)」
- 「呼吸がしにくい(努力性呼吸、呼吸困難)」
などが起こることになります。
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運動したがらない
運動したがらない状態のことを
「運動不耐性」と呼びます。
- 「散歩に行きたがらない」
- 「散歩に行ってもすぐに休みたがる」
- 「散歩中にすぐに止まる」
といった状態です。
心臓からの拍出がうまくいかないことが
起因とされています。
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失神する
興奮した後に
突然倒れてしまうケースが
一番多いです。
血液が脳などにうまく運ばれず、
低酸素状態になるために
失神を起こすといわれています。
また、
失神が起こると
予後が良くないともいわれています。
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犬の僧帽弁閉鎖不全症の検査方法
初期の僧帽弁閉鎖不全症は
無症状のため、
ワクチン摂取などの際に
獣医師の身体検査および
聴診により
心雑音が聴取されて
発見されることがほとんどです。
最近は
健康診断の超音波検査によって、
心雑音が聴取されないような
ごく軽度の僧帽弁閉鎖不全症が
発見されるようになりました。
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問診
心臓病にのみ現れる症状がなく、
さまざまな検査などから
複合的に
診断を行うため、
診察時の問診はとても重要と言えます。
- 動物の情報
年齢、性別、犬種、さまざまな予防履歴など - 環境
飼育環境、活動性など - 性格、習慣
性格的には神経質、怒りやすい、穏やかなど。運動の仕方など - 臨床徴候
呼吸状態、咳などの時間や状況。失神、虚脱、チアノーゼの有無 - 持病
他に疾患がないか、投薬などはしていないか
このような問診からも
心臓病の有無が
把握できることもあるため、
愛犬の状態を細かく把握して
伝えてもらいたいです。
聴診
心雑音とは、
心臓の正常な「ドックン、ドックン」
という音とは別の、
通常は聞こえないはずの
「ザー、ザー」という音です。
心臓に異常がある場合は、
この心雑音が聞こえることで
異常があると判断します。
心雑音は1種類ではなく、
さまざまな分類がされており、
その分類から
心臓病の種類も
ある程度は特定できます。
心雑音が聞こえない
心臓病も存在するため、
心雑音があるからといって必ずしも
心臓病とは限りません。
心雑音はMRの場合は主に
6段階にグレードが分かれ、
1933年に
Samuel A. Levineが提唱したものが
一般的です。
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Levineの6段階分類
- 第1度
非常に微かな雑音。聴取するためには集中する必要がある。 - 第2度
微かな雑音だが、聴診器をあてるとすぐに聴取できる。 - 第3度
中程度の雑音。 - 第4度
大きな雑音で、スリル(※)がしばしば触知される。 - 第5度
非常に大きな雑音だが、第5度までは聴診器を胸壁に接触させないと聴取できない。 - 第6度
胸壁に聴診器を接触させなくても聴取できる。
視診
心臓病の特徴でもありますが、
さまざまな状態が想定されます。
日々の状態の中で、
何かおかしな部位もしくは
状態があれば
症状の始まりかもしれません。
- 全身
痩せた、太った、お腹が膨れている、
体が大きくなった、むくんでいる - 呼吸
呼吸の仕方が変わった、呼吸が速くなった、
座ったまま寝ずに呼吸している、呼吸が苦しそう、咳をする
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呼吸数
僧帽弁閉鎖不全症の症状の一つに
呼吸数の上昇があります。
家でも
呼吸数を把握することで、
心臓病や
その他の疾患を
早期に発見できる可能性があります。
- 正常犬の睡眠時・安静時呼吸数は
1分間に25回以下とされています。 - 睡眠時、安静時呼吸数が1分間に30回以上の場合は
心臓病、その他の疾患として呼吸器疾患、重度の貧血、
内分泌疾患、痛み、発熱などがあります。 - 1分間に40回以上の呼吸数の場合は、
僧帽弁閉鎖不全症による肺水腫という病態に陥っている
可能性があります。
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可視粘膜
舌の色で判断します。
舌の色は
赤血球に含まれるヘモグロビンにより、
ピンク色が
正常な状態です。
心臓病に陥ることで
うまく呼吸ができずに
紫色をていすることがあり、
「チアノーゼ」と言われます。
触診
心臓病において、
触診で最も大事なことは脈拍です。
脈拍とは、
血管の拡張と収縮を繰り返すことにより
指に触れる感触で、
脈拍が弱いと
心臓からの血流が減少していることを指すため、
命の危険性があります。
これを
「心臓からの一回拍出量の減少」と言います。
触診では、
心臓からの血液が
抹消に届いているか、
血圧はしっかりあるかなどを
脈拍で評価します。
1回拍出量の減少を評価する方法として、
「毛細血管再充満時間」(CRT)と言われる
評価法が用いられます。
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「毛細血管再充満時間」の評価方法
通常ピンク色の粘膜をしている
歯肉部分を指で押し、
指圧で白くなった歯肉部分が
どのくらいの時間で
元に戻るかを評価します。
通常は
2秒以内に戻るはずですが、
延長している場合は
心臓からの拍出が悪いことを
意味します。
その他にも脱水、
緊張によっても
延長することがわかっています。
レントゲン検査
レントゲン検査では、
心臓の拡大、肺水腫の有無を評価し、
ステージ分類します。
一般的には
胸骨心臓スケールで評価し、
正常な犬の場合では
「VHS<10.5」の基準に収まるかどうかを
判断します。
最近では、犬種によ
りVHSの数値基準が変わりつつあります。
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計測方法
動物を横にした胸部レントゲンを撮影し、
(ラテラル像)
心臓を長軸と単軸で計測します。
次に、
計測した数値を第4胸椎から
何椎体分あるかを計測します。
以下のレントゲンのケースでは
「VHS=12(正常<10.5)」となり、
心拡大が存在することが
認められます。
超音波検査
レントゲン検査と合わせて、
超音波検査で
心臓の拡大評価をします。
心臓の機能性、形態を評価し
確定診断を行います。
心電図検査
心電図検査から得られる情報として、
以下の三つがあります。
- 心拍数
- 心房や心室の拡大所見
- 不整脈
特に3番の不整脈に関しては、
心電図検査を行わないと
他では代用ができません。
僧帽弁閉鎖不全症における不整脈は
いくつも報告されており、
予後が悪いため
早急に対処が求められます。
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正常時の心拍数
- 成犬
70~160bpm - 超大型犬
60~140bpm - トイ犬種
180bpmまで - 子犬
220bpmまで
とされています。
僧帽弁閉鎖不全症の進行に伴い、
心拍数の上昇が
認められています。
心拍数の上昇が見られた場合は、
不整脈を伴っている
可能性が高くなります。
心電図の波形が乱れることにより、
心房や心室の拡大を
把握することができます。
不整脈
僧帽弁閉鎖不全症に関連した
不整脈としてあげられるものは、
一般的に
上室期外収縮と心房細動がほとんどです。
その他に
心室期外収縮、心室頻拍、房室ブロック、
洞不全症候群などもまれに認められます。
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そもそも不整脈とは何か?
心臓には
心拍動のペースメーカーのような役割を担う、
洞房結節(どうぼうけっせつ)と言われる
場所があります。
ここから電気が発信され、
心臓全体に行き渡ることで
心拍動が起こります。
この電気が、
- 「正常に伝わらない」
- 「電気は伝わるが伝わり方が早い」
- 「電気の発信場所が違う部分から出る」
といったことが
不整脈になります。
心電図的には、
- 波形が乱れたり
- 心拍数が異常
- 心拍数のリズムが乱れる
ことを不整脈と言います。
不整脈が問題なのは、
心臓は一定の動きができなければ
血液を送るポンプの役目が阻害され、
全身に血液を
送れなくなってしまうためです。
突然死の原因でもあるため、
早急な治療が望まれます。
また心房細動が生じた症例の
生存期間は、
1.1カ月と報告されているため、
予後不良因子でもあります。
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心臓バイオマーカー
心臓バイオマーカーとは、
心臓に何かしらの負荷がかかることで
血中などに出てくる物質のことで、
心不全の病態などを
把握する評価法です。
臨床的には主に
咳の原因が心臓なのか、
呼吸器なのかの判断に
使用され、
心臓病の早期発見にも
使用されています。
しかし、
これのみで
何かを判断することはなく、
あくまでも
補助的な役割で使用しています。
心臓バイオマーカーには
いくつかの物質が存在し、
現在の獣医療で使用されているのは、
「NT-proBNP」「ANP」があります。
NT-proBNP
主に
心室より放出するホルモンで、
それを象徴する
Fineらの報告では、
呼吸器症状をていする犬のうち、
呼吸器疾患を主原因する犬は
全て心臓のバイオマーカーである
NT-proBNPが800pmol/L以下であり、
うっ血性心不全を原因とする
23頭(92%)で、
1400pmol/L以上でした。
この結果を受けて、
NT-proBNP濃度が
1400pmol/L以上の症例では、
うっ血性心不全を
強く疑うと結論付けています。
その後に出た
エビデンスなどからも、
以下の基準になっています。
- 900pmol/L
呼吸器疾患の可能性が高い - 900~1800pmol/L
原因の鑑別ができない - 1800pmol/L
うっ血性心不全の可能性が高い
ANP
主に
心房筋で産生されるホルモンであり、
心房が伸展することで
血中に放出されます。
僧帽弁不全症の病態では
左房うっ血が起こるため、
評価には
適していると言えます。
正常犬においては、
ANP濃度
が30pg/mL以下とされています。
- 30pg/mL
正常 - 50pg/mL
左房負荷あり - 100pg/mL
肺水腫を発症する恐れあり
このような結果が
より高いことで、
左房の負荷を
読み取ることができます。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療法
ほとんどの病気で、
治療には薬で治療する
内科的な治療法と
手術による外科的な治療法に分かれます。
僧帽弁閉鎖不全症も同様に、
内科治療と
外科治療が存在します。
まず
僧帽弁閉鎖不全症の問題は、
血液の逆流が起こることにより
血液がうっ血し、
(血液が一部分に溜まること)
さまざまな病態を
引き起こすことです。
内科的には、
血液のうっ血を起こさないように
血液循環をコントロールする
治療法があります。
外科的には、
変性した弁を修復し
血液の逆流をなくす、
もしくは
少なくする治療法があります。
僧帽弁閉鎖不全症は
内科的には治らず、
維持を目的とし、
外科的にも弁の修復を行うだけで
決して元の形に
治ることはあり得ません。
10年前までは
100%内科的に施されていた治療も、
現在は
外科的治療を選択する人が
数%ながら
出てきていることは事実であり、
全国に
僧帽弁閉鎖不全症の手術を行う病院も
5~10カ所程度ですが存在します。
ただ、
僧帽弁閉鎖不全症が見つかれば
すぐに手術というわけではありません。
前途した
ACVIMのステージごとに
治療法があり、
その基準が
世界的にも利用されています。
まずは、
内科的な治療についてお話しします。
ステージA、ステージB1
ステージA、ステージB1では
無治療です。
今の時代、
僧帽弁逆流があるからといって
投薬することはありません。
つまり獣医師が
聴診のみで投薬を開始することは
あり得ないということになります。
食事に関しても
変える必要はありません。
ステージB2
ステージB2から
治療を開始することになるのですが、
2016年に新たに投稿されたエビデンスが
このステージの
今までの治療法を根底から覆し、
物議を呼んでいます。
そのエビデンスは
EPIC studyです。
EPIC studyによって
ピモベンダンの有効性が示され、
(カルシウム感受性増強剤)
専門医により
満場一致となりました。
このエビデンスが投稿される前は
ACE阻害剤が推奨されていましたが、
(血管拡張剤)
今後は
ピモベンダンの治療が優先されそうです。
ただ、
注意が必要です。
あくまでも
EPIC studyの基準を満たした
心拡大所見があって初めて
ピモベンダンの
有効性が示されています。
さらに、
ACE阻害剤も過去のエビデンスなどから
カルフォルニア大学など
推奨している獣医師がいることは
事実です。
大事なことは、
心拡大所見を検査により
的確に判断し、
ステージに合った治療を
行うことだと考えます。
ステージC
ステージCの中でも、
治療においては入院治療(C1)と
在宅治療(C2)に分けられますが、
ここでは
まとめて解説します。
専門医によって
合意が取れている治療薬は、
- 利尿剤(フロセミド)
- ACE阻害剤(ベナゼプリルなど)
- カルシウム感受性増強剤(ピモベンダン)
です。
合意が取れているというのは、
確固たるエビデンスから
専門医が推奨しているということです。
その他に、
少数ではありますが
合意が取れている治療薬には、
- 利尿薬(スピロノラクトン)
- 強心剤(ジゴキシン)
- βブロッカー
- ジルチアゼム
- 硝酸薬
などが推奨されています。
少数の場合は
確固たるエビデンスが
乏しいということになります。
ステージCで問題になるのは、
症状が出始めているということです。
症状が出始めているということは、
うっ血性心不全に
陥っているということであり、
利尿剤がベースとなる治療が
(一般的にフロセミド)
推奨されます。
ただ、
利尿剤には
副作用が起こることがわかっているため、
最小用量での使用が
推奨されます。
ステージD
ステージDは
緊急治療(D1)と長期治療(D2)に
分けられます。
まずこのステージは
重症化された
うっ血性心不全であり、
症状が常に出ている状態です。
利尿剤の副作用や高血圧、
低血圧、腎不全、肝不全など
さまざまな病態が絡み合っている
状態であるため、
一つの薬を飲ませればいい
という訳ではない状況なのです。
今までに推奨された
治療を行っても
症状の改善は乏しく、
もしくは
心拡大の悪化などを招くような、
いわば
末期状態です。
ここでは、
より強い血管拡張薬の
ヒドララジンやアムロジピンなどが
推奨されますが、
それでも状態の改善が無い場合は
さらなる
利尿剤の投与、
強心剤の増量などの治療を
症状や体の状態に併せて
的確に行っていくステージです。
ステージC
もしくはDにおいては、
その子の状態に合った治療薬が
推奨されます。
必須となる薬はあるものの、
推奨されていない薬の組み合わせや
用量が必要になり、
食欲などの状態によっては
入院による点滴治療も
必要になることが
少なくありません。
犬の僧帽弁閉鎖不全症における外科的治療の選択
現在、ステージB~Dのどこでも
僧帽弁修復術の手術は
行われています。
ステージが悪くなるほど、
生存率が下がることも
わかってきています。
その中で、
内科治療を選ぶか
外科的治療を選ぶかは、
病態によって
獣医師の判断になりますが、
最後は
飼い主さまの判断となる訳です。
僧帽弁閉鎖不全症の
外科的手術を勧める基準として
設けているのは以下の項目です
内科的治療を行っても症状の改善が見られず、
かつ薬の副作用が出ている場合
MIの進行度は重症まで至っていなくも、
(ステージC)
弁を支える腱索が断裂を起こし、
肺水腫を
繰り返し起こしている場合
この二つのどちらかがある場合は、
必ず
外科手術を勧めています。
参考となるかどうかはわかりませんが、
心不全発症後は
(僧帽弁閉鎖不全症により症状をきたしている状態)
内科治療を実施しても、
中央生存期間は247日となっています。
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中央生存期間ということは、
もっと前に亡くなってしまった犬もいれば、
もっと長く生きた犬もいるということで、
平均ではなく
全ての頭数の内の
ちょうど真ん中の犬が
247日生存したということを意味します。
もっとも2012年のエビデンスなので、
その頃よりは
内科治療薬でも
優れた治療が行えているだけに、
今の生存期間は
もっと長いと思われます。
外科治療の成功率は
約90%と報告されていますが、
問題はいくつかあります。
僧帽弁修復術を行った全ての僧帽弁が
完璧に治る訳ではないということ。
全ての僧帽弁閉鎖不全症が無くなる訳ではなく、
投薬なども継続する可能性があります。
もちろん、中には無治療で維持する子もいます。
心臓手術を行うためのコスト面です。
手術、入院、術後ケアなどを踏まえ、
総額で200万円以上のコストが掛かります。
高齢の場合が多いため、
残された寿命をどう全うさせるかは
飼い主さまの判断に委ねられます。
飼い主さまは、
これらのことも踏まえて
内科治療なのか
外科治療なのかを
検討する必要があるでしょう。
まとめ
犬の僧帽弁閉鎖不全症は専門医を受診しましょう
近年、
獣医療の発達で
犬の寿命が延びていることが
報告されています。
心臓の病気も、
「心雑音があるから治療を開始する」
という時代は終わりました。
経験と技術、
そして
知識が専門的だからこそ、
超音波検査や
レントゲン検査などを使いこなし、
正確な診断を下すことができます。
愛犬が
万が一病気になった時には
どのような治療が望ましいのか。
より正確に状態を把握し、
的確な治療を行うことが
愛犬の寿命に影響してきますので、
病気ごとの専門医と
冷静に判断することが必要です。
僧帽弁閉鎖不全症などの
的確な治療が必要な疾患は、
愛犬が寿命を全うするまでの
生活の質を高く保つためにも、
専門医を受診することを
お勧めします。
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