犬の不整脈!原因・症状・治療法って?
公開日:2024/05/13 / 最終更新日:2024/05/13
犬の不整脈とは
心臓に拍動する指令を出しているのは、
洞結節 (洞房結節ともいわれます)という
心臓の上部にある
特殊な心筋細胞です。
洞結節は
犬の場合は
1分間に100回前後の頻度で
電気刺激を発生します。
その刺激が
心房や心室へと
次々に伝えられて
心筋が収縮するわけです。
正常な心臓は
規則正しく
「トン・トン・トン」と
リズムよく拍動し
収縮していますが、
洞結節や
それを伝える
刺激伝導系などに不具合が生じ、
拍動のリズムに
乱れが生じることがあります。
それが
「脈の乱れ=不整脈」となって現れるのです。
脈が規則的でも
異常に速い場合や
遅い場合も
不整脈と呼びます。
不整脈とは、
読んで字の如しで
脈が不整ということなのです。
不整脈に陥ると、
ポンプの役目として
拡張と収縮を繰り返して
うまく血液を運んでたはずの
心臓の機能が損なわれ、
血液循環に障害が起こって
何かしらの異常に
つながるという訳なのです。
犬の不整脈の分類
不整脈の種類として
2つの分類法があります。
1つは
「心臓の心拍数(脈拍数)」による分類、
もう1つは
「心臓のどの場所で異常が起きているか」の
分類です。
心拍数(脈拍数)の分類
心拍数の分類には
さらに3つに分かれます。
1つ目は
心拍数が正常心拍数より
極端に遅くなる「徐脈」、
2つ目は
心拍数が正常心拍数より
極端に早くなる「頻脈」、
最後は
リズムが乱れてしまう
「期外収縮」
(心臓のあらゆる部分が電気を出し、
勝手に動こうとしてしまうため
リズムが保てなくなる)に分かれます。
心臓の異常が起きている場所による分類
心臓の上部に当たる部分
(左心房や右心房近辺)に異常がある場合を
「上室性不整脈」、
心臓の下部にある
心室付近で出た異常が
「心室性不整脈」といいます。
施設によっては、
- 「致死性の低い不整脈」
- 「致死性の高い不整脈」
などという
場合もあります。
犬の不整脈の症状
不整脈の症状で
一番起こりやすいのは、
失神です。
愛犬が倒れたり、
急に横たわってしまったり、
力が入らなくなってしまったり
することです。
発作という
言い方をする方も
いるかもしれません。
ただ、
失神が起きたから
不整脈というわけではなく、
不整脈のみに起こる
特有の症状というわけでもありません。
そして、
他に不整脈の症状として、
思いつくものはありませんが、
他にあるとすると
重症化した心臓で起きている
不整脈などには咳など
付随した症状が
起こる可能性は高いです。
関連記事
犬が咳!原因は!病院にいくべき症状って?
関連記事
犬の心臓病!初期~末期症状とは?
犬の心拍数の正常や脈拍の取り方
犬の心拍数の
正常や脈拍の取り方について
ご説明します。
ただ、
心拍数と脈拍数は
同じとは限らないということは
知っておいてください。
心拍数は心臓の拍動数、
脈拍数は動脈の拍動数です。
心臓が一回
拍動することが、
動脈に伝わらなければ
拍動しないからです。
ですので、
不整脈をより正確に
判断する場合は、
心臓の拍動を
感知する必要があります。
犬の心拍数は
基本安静時に計測することが
求められます。
少しでも興奮したり、
運動すると
正常値を上回るので
注意が必要です。
犬種や年代によって
正常な心拍数は
異なりますが、
以下の通り
教科書に記載されています。
- 成犬
70~160bpm - 超大型犬
60~140bpm - トイ犬種
180bpmまで - 子犬
220bpmまで
※1分間の心拍数を
bpmという単位で表します
脈拍の取り方として、
一般的なのは
人の場合は
手首で計測しますが、
犬の場合は
股の股関節の部分で
脈拍を触知するか、
心臓そのものの部分がある
胸に手をあて
計測するやり方があります。
できれば、
聴診器があれば
より正確に計測できるでしょう。
1分間の回数を数えていると、
間違えやすかったり、
頻脈であれば
数えることが困難な場合もあるため
15秒の心拍数を4倍して
求める方法が利用されています。
関連記事
愛犬の異変を聴診器を使って早期発見!使い方って?
正常な状態でも心拍数が上がる場合
正常な状態でも
心拍数が上がることがあるため、
その理解も深めておきましょう。
興奮、運動後
生理的な現象です。
犬は興奮時に心拍数が上がります。
個体差はありますが、
心拍数が200回を超えることも
少なくありません。
抱っこしたときに
興奮をしていれば
間違いないでしょう。
最近では白衣高血圧と同様に、
動物病院に来た場合に
心拍や血圧が
上がるといわれています。
関連記事
犬が興奮!理由と落ち着かせ方法って?
痛みがある
何かしらの痛みにより、
心拍数が上昇し
いつもより心臓がドキドキしている
可能性が考えられます。
この場合、
他の症状と組み合わせて
確認が必要です。
熱がある
感染症や炎症、
熱中症などにより
発熱が見られた場合には
心拍数が上昇し、
ドキドキしているように感じます。
また、
抱っこした際に
心臓の拍動が強く感じるので
心臓病ではないかと
言われることがあります。
関連記事
犬の体温って?平熱や体温の測り方!
極端に痩せている
胸壁と言われる
胸の部分に筋肉や脂肪がないと、
心臓の鼓動を
大きく感じることがあります。
関連記事
犬が痩せる!原因は!痩せすぎの判断方法って?
洞不整脈(呼吸性不整脈)
とても重要なのが
洞不整脈(呼吸性不整脈)です。
人では異常とされている
不整脈が
犬の場合は
生理的に発生する
(いわば正常のことがある)
といわれています。
特殊なケースですので、
こちらでご紹介します。
不整脈と付いているから
病気とは限らない
ということになります。
上述した通り
通常は「トン・トン・トン」と
一定の割合でリズムよく
拍動することが
正常とお話ししました。
しかし今回は
「トン・トン……トントントン」と
リズムが一定でない脈が
抱っこした際などに
触知されることや、
※触知 (しょくち)とは?
手を用いて、身体各部の診察を行うこと。
心臓の拍動、脈拍、
胸部の振動などを調べるほか、
臓器や異物、浸潤などを触知する。
病院でも聴診をした際に
聞かれることがあります。
これは呼吸周期に伴って
脈が早くなったり、
遅くなったりするといわれています。
比較的多く出現する不整脈です。
ただ、
上部気道疾患でも
このような脈が
聞かれることがあるので、
注意しましょう。
犬の不整脈の原因
原因として、
人では
- 遺伝や体質
- ストレス
- 睡眠不足
- 喫煙
- カフェイン摂取
などが挙げられます。
犬の場合はというと、
確かに遺伝や体質の
可能性は考慮されますが、
そのほか
生活習慣で
上記に挙げられる原因というよりは、
心臓病や全身性疾患による
不整脈が
多く報告されています。
そして、
不整脈の種類によっても
原因はさまざまと
いえるでしょう。
大きく分類した
種類別に原因を紹介します。
関連記事
犬のストレスサイン!原因や症状、ストレス解消法って?
脈が正常より遅い徐脈の原因
脈が正常より遅い
徐脈の原因としては
以下の5つが主な原因です。
- 迷走神経の刺激
- 甲状腺機能低下症などの代謝性疾患
- 薬剤による副作用
- 心臓疾患(遺伝、後天性)
- 洞不全症候群
1、迷走神経の刺激
迷走神経反射ともいわれます。
迷走神経は
副交感神経と
深く関係しているため
似た働きがあります。
迷走神経が
主に支配している器官を、
以下に挙げてみましょう。
感覚神経として
外耳道、咽頭、食道を支配
運動神経として
嚥下や反回神経(発生や呼吸)を支配
副交感神経として
内臓(心臓、胃、腸など)の運動を支配
このように
分布している神経が、
何かしらの原因(激しい痛みや炎症など)で
刺激を受けることで
心拍数の減少につながります。
2、甲状腺機能低下症などの代謝性疾患
甲状腺から出るホルモンは
血液の流れに乗って
全身の細胞に働きかけ、
新陳代謝を良くし、
骨や神経などに関わり
生きていく上で
欠かせないホルモンなのです。
このホルモンが欠けることで
心拍数が減少することが
わかっています。
3、薬剤による副作用
ジゴキシンなどの
強心薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬や
麻酔薬によって
心拍数の減少につながります。
4、心臓疾患(遺伝、後天性)
さまざまな心臓疾患により、
洞房結節が影響を受け
心拍数が遅くなります。
5、洞不全症候群
洞不全症候群は、
洞房結節の機能障害により
脈が遅くなったり
止まったりしてしまう状態を
指します。
重症化すると
脈が遅くなったり、
早くなったりすることもあります。
洞房結節が
どういった機能障害を
起こしているかによって、
3つのタイプに分類されます。
- Ⅰ群
恒常的な洞徐脈 - Ⅱ群
洞ブロックまたは洞停止 - Ⅲ群
徐脈に上室頻脈性不整脈が併発するもの
脈が正常より早い頻脈の原因
大きく分けて
考えられる原因としては
以下の5つです。
- 興奮や疼痛、発熱
生理的な現象 - ショック状態や貧血、低酸素症
酸素が少ないため心拍数を増やし補填 - 心不全
心臓が悪いと血液循環が悪いため、心拍数を早くして補填 - 敗血症などの全身性疾患
発熱などを伴っていること、
生命維持に伴い血圧を上げるため心拍数が上昇 - 薬剤
交感神経作動薬や迷走神経抑制剤の作用により心拍数が上昇
関連記事
犬の体温って?平熱や体温の測り方!
関連記事
犬の貧血!原因や、症状、予後は?
関連記事
犬の心不全!症状や原因って?
リズムが乱れる期外収縮
期外収縮は
上室性と心室性に分けて
紹介します。
上室性期外収縮は、
心機能が正常な場合でも
認められることがあるものの、
多くは
心房拡大をきたしている場合や、
慢性房室弁疾患(僧帽弁閉鎖不全症)、
心筋症、容量負荷を生じる
先天性心疾患
(動脈管開在症や心室中隔欠損など)を
有していたり、
非心臓疾患
(甲状腺機能亢進症、敗血症、
血管肉腫などの腫瘍、麻酔などの薬剤)などが
挙げられます。
心室性期外収縮では、
心臓病による悪化で
心不全になった場合をはじめ、
- 先天性心疾患
- 慢性房室弁疾患
- 心筋症
- 心筋炎
- 感染性心内膜炎
- 心筋梗塞
- 心臓腫瘍
などが挙げられ、
特にボクサーによる
不整脈源性右室心筋症、
ドーベルマンの
拡張型心筋症、
シェパードの
遺伝性心室頻脈性疾患では
よく見受けられます。
関連記事
犬の拡張型心筋症!症状や原因、予防法って?
また、
非心臓性として
- 自律神経の不均衡
- 低酸素
- 貧血
- 敗血症
- 播種性血管内凝固
- 胃拡張胃捻転症候群
- 膵炎などの炎症性疾患
- 甲状腺疾患
- 麻酔薬などの
心臓毒性を有する薬剤
で報告されています。
関連記事
犬の貧血!原因や、症状、予後は?
関連記事
犬の膵炎(すいえん)!症状や、原因、治療って?
関連記事
犬の甲状腺機能低下症!症状や、かかりやすい犬種って?
関連記事
犬に麻酔!リスクや必要な理由って?
犬の不整脈の検査
不整脈の検査には主に
「心電図検査」(ECG)と
「ホルター心電図検査」の
2通りがあります。
それぞれについて
紹介していきます。
心電図検査(ECG)
心電図とは
体表面に電極をおき、
心臓の電気的な活動を
記録したものです。
主に
5つの波で構成された
PQRSTといった
波形を1つと考え、
一定のリズムや
形状を見ることで
心拍数、不整脈を診断します。
ホルター心電図検査
24~72時間、
犬の体に心電計を設置し
不整脈の有無を調べます。
失神などの症状と
不整脈が合致するかどうか、
飼い主さんには
症状の日時などを記録してもらいます。
犬の不整脈の治療法
不整脈の治療は基礎疾患、
いわゆる
原因を治療することが
重要とされています。
そして、
治療対象に症状があれば
施すことになります。
また、
突然死のリスクがあるとされる
不整脈には
早急に治療を施します。
関連記事
犬の突然死(急死)!考えられる原因って?
リスクが高い
主な不整脈は
人でも
心室頻拍、心室細動、房室ブロックとされ、
犬でも
同様と言えます。
そのほかにも、
心房細動、洞不全症候群、
上室・心室性期外収縮も
リスクが高い不整脈です。
徐脈性不整脈で使用される薬は、
- アトロピン
- イソプロテレノール
- テオフィリン
- シロスタゾール
などがあります。
単純に
心拍数が上がりやすくなる
薬ではありますが、
効果が見られない場合は
ペースメーカーということになります。
ペースメーカーとは、
心臓へ機械を設置し
電気を
一定間隔で発生させる治療です。
頻脈性不整脈には、
さまざまな不整脈が
混合することもあり
診断がとても重要といえます。
使用される薬剤は、
カルシウム拮抗薬のジルチアゼムや、
β遮断薬のアテノロールや
カルベジロールなどが一般的です。
ほかには
- エスモロール
- プロプラノロール
- ソタロール
なども使用されます。
期外収縮には、
- プロカインアミド
- メキシレチン
- リドカイン
- アミオダロン
が使用されますが、
使用するタイミングなど
かなりの経験が必要といえます。
犬の不整脈の予防法
加齢に伴い、
徐脈などが見られることが
わかっています。
関連疾患としては、
甲状腺機能低下症などや、
犬では少ないとされる
冠動脈の異常などが
関連しているケース、
さらには血圧、
心臓の筋肉の疲労など
さまざま考えられます。
予防法として見てみると、
心臓への栄養素(サプリメント)などを
とることが重要と言えるでしょう。
関連記事
犬の甲状腺機能低下症!症状や、かかりやすい犬種って?
スポンサーリンク
「犬用・毎日習慣 サラシア&イヌリン」は
肥満で負担のかかる血糖値
体重管理の健康維持に必要な8種類
(サラシア・イヌリン・バナバ・クロム
マイタケ末・ギムネマ・桑の葉・難消化デキストリン)
を配合しています。
安心安全の国産品質、GMP、ペットフード安全法、
残留農薬のポジティブリストに基づき、
香料・着色料・保存料・化学調味料を使用せずに
製造しています。
全犬種が食べやすい
チキン味錠剤タイプです。
【毎日習慣 サラシア&イヌリン】
また、
肥満や高血圧などが起こらないように
日々の食生活、
さらには
ストレスなどをかけない生活環境も
整えることが重要です。
上述しましたが、
基礎疾患が主な原因のことも多いため、
早期発見・早期治療を試みて
早めの対処が望ましいでしょう。
関連記事
犬が太る!肥満の原因は?病気のリスクって!?
関連記事
犬のダイエットに効果的な食事って?
関連記事
愛犬が長生きする秘訣!
関連記事
犬のストレスサイン!原因や症状、ストレス解消法って?
まとめ
犬の不整脈は日頃からの健康管理を
犬の不整脈は、
突然死にもつながる怖い病気です。
治療しなければ
1回の症状発現が
取り返しの付かないことになる
可能性もあります。
目に見えない病気だからこそ、
今一度
愛犬の心臓を確認してあげてください。
PR
「シニア犬の病気」カテゴリーの関連記事
「動物病院」カテゴリーの関連記事
「犬の不整脈」カテゴリーの関連記事
「犬の分離不安」カテゴリーの関連記事
「犬も寒がり」カテゴリーの関連記事
「食事療法」カテゴリーの関連記事