犬のリンパ腫!原因や、かかりやすい犬種って?
公開日:2024/04/13 / 最終更新日:2024/04/13
犬のリンパ腫とは
正常なリンパ球は
免疫細胞で、
ウイルスなどから
体を守る働きをしています。
この細胞は
全身を巡りながら、
いくつかのポイントに集まって
仕事をしていますが、
最も重要なポイントは
「リンパ節」で、
その他
「胸腺」「消化器」「皮膚」などが
挙げられます。
リンパ腫は、
このリンパ球が
腫瘍化したものですが、
日頃から
リンパ球の集まっている
- リンパ節
- 胸腺
- 消化器
などの部位に
よく発生します。
その発生部位によって
治療法が異なりますので、
どこに出来るかによって
「解剖学的分類」がされています。
解剖学的分類ってなに?
リンパ腫は
発生する場所の違いにより、
いくつかの型に
分類されています。
犬では、
- 多中心型(体中のリンパ節が腫れるタイプ)
- 前縦隔型(胸の中に塊ができるタイプ)
- 消化器型(腸に病変ができるタイプ)
- 皮膚型(皮膚病ができるタイプ)
などがみられます。
また、
この他にも
節外型(眼、中枢神経など)など、
いろいろなタイプが
みられます。
いずれのタイプも
抗がん剤を使った
全身療法が主体ですが、
多中心型が最も発生が多く、
また治療への反応も
比較的良好です。
犬のリンパ腫のステージ分類
リンパ腫の重症度は
ステージで
分類することができます。
以下のWHO分類
(多中心型リンパ腫の例)では、
ステージが高いほど
予後が悪い(生存期間が短い)と
言われています。
ステージはさらに
「臨床的サブステージa(臨床症状なし)」
または
「b(臨床症状あり)」に分けられる。
臨床症状とは
- 元気消失
- 食欲不振
- 嘔吐
- 下痢
などの
さまざまな症状のこと。
関連記事
犬が元気がない!原因や病気、対策って?
関連記事
犬が食欲不振!考えられる原因と病気!
関連記事
犬が吐く!原因や対処法って?
関連記事
犬の下痢!原因や病院に連れていくべき症状とは?
リンパ腫にかかりやすい犬種・年代
リンパ腫にかかりやすい犬種
発生リスクの高い犬種は
- ゴールデンレトリーバー
- シェルティ
- シーズー
- ボクサー
などが挙げられますが、
すべての犬種に
可能性があります。
逆に
リスクの低い犬種として
- ダックスフンド
- ポメラニアン
が挙げられています。
リンパ腫にかかりやすい年代
好発年齢は
6~9歳齢ですが、
すべての年齢(6カ月~15歳)で
発病の報告があります。
10歳の犬は
1歳の犬の
57倍なりやすいと
報告されています。
リンパ腫の症状
初期症状
リンパ腫の
代表的な症状は、
リンパ節が腫れることです。
そのため、
初期症状を見つけるには、
体の外から触れる
リンパ節を
チェックしましょう。
体表リンパ節
体の外から触れる
主なリンパ節は
五つで、
下顎、浅頸、膝下リンパ節は
比較的わかりやすい
部位です
(正常であれば腋窩、鼠径リンパ節は
よくわからないかもしれません)。
この他、
体の中にも
無数のリンパ節があります。
- 下顎リンパ節(下顎骨のカーブするあたり)
- 浅頚リンパ節(人間で言う鎖骨のあるあたり)
- 腋窩リンパ節(前足の付け根、脇の下のあたり)
- 鼡径リンパ節(後足の付け根、内股のあたり)
- 膝窩リンパ節(膝の裏側)
他にも、
目の異常などから
病気に気付くこともあります。
また、呼吸の異常(胸腺型)や
嘔吐・下痢(消化器型)、
皮膚炎(皮膚型)など
さまざまな症状があります。
関連記事
犬の呼吸が早い!息が荒い!原因って?
関連記事
犬が吐く場合の原因や対処法を獣医師が解説
関連記事
犬の下痢!原因や病院に連れていくべき症状とは?
関連記事
犬が痒がる原因!
末期症状
全身で腫瘍細胞が増殖すると、
命に関わる
さまざまな症状が見られます。
例えば
皮膚型リンパ腫では
皮膚炎が全身に広がり、
- 強い痒み
- 痛み
- 出血
を起こします。
消化器型リンパ腫では、
食事ができなくなり、
下痢などの症状が
急速に悪化します。
関連記事
犬の下痢!原因や病院に連れていくべき症状とは?
その他、
多い症状は以下の通りです。
- 血液症状
血液の異常が進行して、貧血や発熱、敗血症を起こします。 - 消化器症状
肝機能の異常や腹腔リンパ節による圧迫から、
嘔吐・便秘が見られます。 - 呼吸器症状
リンパ腫が肺浸潤したり、
誤嚥性肺炎を起こしたりすることがあります。
※抗がん剤治療中に免疫力が落ちて
肺炎になることもありますが、
この場合は早く気付ければ、
治療によりほとんどが治癒します。
関連記事
犬の貧血!原因や、症状、予後は?
関連記事
犬の便秘!考えられる原因や対処法って?
犬のリンパ腫と症状の似た病気・合併症
リンパ節が腫れる疾患には
- 炎症(歯肉炎・皮膚炎)
- 感染症(真菌・細菌・ウイルス)
などもありますから、
動物病院では
これらの病気との鑑別診断を行います。
関連記事
犬の口腔腫瘍!特徴や予防法って?
犬のリンパ腫の原因
リンパ腫に、
明らかな
一つだけの原因というものは
ありません。
リンパ腫に限らず
「がん」は
遺伝子に傷がついて
発症しますが、
これには
さまざまな要素が関係しています。
- ウイルス感染
- 放射線
- 紫外線
- ある種の薬剤
- ホルモン
- 炎症性の疾患
- 加齢
など、
複数の要因が重なって
発病すると考えられています。
関連記事
シニア犬(老犬)に多い病気!症状や健康診断の準備は?
関連記事
犬のがん!症状や、原因、予防法って?
犬のリンパ腫の検査・診断方法
リンパ節の腫れを見つけたら、
歯周病などによる炎症なのか、
関連記事
犬の歯周病!原因や治療法、放置リスクって?
リンパ腫なのかを
調べます。
腫れたリンパ節に
注射針を刺して、
わずかな細胞を
顕微鏡で観察する検査
(細胞診)を行います。
この検査は
痛みも少なく、
その場で結果が解るため、
早期に治療を始められます。
細胞診で診断が
つかない場合、
組織を一部切り取り(切除生検)、
病理検査を行います。
また、
近年では針生検と
遺伝子検査を組み合わせた方法
(クローン性解析)も利用されます。
犬のリンパ腫の診断方法
犬のリンパ腫の治療法
リンパ腫の
主な治療法は
全身治療である化学療法
(いわゆる抗がん剤)です。
さまざまな
抗がん剤がありますが、
癌細胞はすぐに
耐性を獲得するため、
数種類の薬を組み合わせて
使用することが必要です。
幸いなことに、
リンパ腫は
化学療法に
非常によく反応します。
治療前には
状態の悪かった動物が、
抗がん剤治療後には
見違えるように元気になり、
あたかも
完治したかのように見えます。
この状態を「寛解」と言います
(臨床徴候が消失した状態。
いわゆる完治とは異なる)。
癌細胞が見えないだけで、
まだまだ多くの細胞が
生き残っており、
すぐに元の状態まで
戻ってしまいますので、
状態が改善した後も
治療を続ける必要があります。
また、
治療が順調に進み
数カ月~数年の間、
元気な状態が続いたとしても、
いずれ再発は避けられません。
これを
「再燃」と言います
(再び癌細胞が増殖し、発症してくること)。
リンパ腫の治療は
「寛解」→「再燃」→「再寛解」
のサイクルで進みます。
通常は、
1クール数カ月単位で
化学療法を行いますので、
治療には
飼い主さんの理解と
長期間の治療に備える
体力・忍耐力が必要となります。
犬のリンパ腫の治療薬の種類
プレドニゾロン(プレドニン)
免疫を抑えたり
炎症を和らげる薬ですが、
リンパ腫の治療においては
抗がん剤として用いられます。
通常は
治療の初期に用いられ、
徐々に休薬していきます。
L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)
リンパ腫の細胞に
効果を示しますが、
健康な細胞には無毒のため
副作用が起こりません。
通常は治療の初期や再発時、
リンパ腫で弱った体力を
回復させる時期に用いられます。
ビンクリスチン(オンコビン)
リンパ腫治療では
最も代表的な
注射の抗がん剤です。
副作用も少なめです。
サイクロフォスファミド(エンドキサン)
リンパ腫では
良く処方される抗がん剤です。
膀胱炎が起きることがあります。
ドキソルビシン
最も強力な抗がん剤です。
副作用として嘔吐や下痢、
白血球減少が起こります。
点滴注射薬であり、
数時間かけて投与します。
関連記事
犬が吐く場合の原因や対処法を獣医師が解説
関連記事
犬の下痢!原因や病院に連れていくべき症状とは?
この他にも、
さまざまな薬が
リンパ腫に対して
効果があるとされています。
通常は
いろいろな角度から
リンパ腫を攻撃するために、
二つ以上の薬剤を組み合わせて
治療します。
薬剤の組み合わせや
投与する順番は
さまざまな研究者が
レシピを公表していて、
動物の状態や
症状に応じて選択されます。
※このレシピを「プロトコール」とよびます。
治療・手術費用の目安
初期の診断
リンパ腫の進行度によって、
使用する検査内容も変わるため
一概には言えませんが、
3万円~10万円
(初期検査、点滴、病理検査など含む)
まで幅があります。
抗がん剤治療
プロトコールによりますが、
治療期間は
1クールが平均5~6カ月間で、
その後は
順調にいけば休薬します。
一般的な治療費の目安としては
小型犬なら
週1回の治療が1~3万円、
1クールは総額で
15~30万円になることが
多いようです。
犬のリンパ腫の予後
最初の治療の反応が良ければ、
(進行度・タイプにもよりますが)
1年以上の
生存も見込めます。
比較的長生きできる要因
(予後因子)として
以下の三つが
あげられています。
- 臨床症状
始めの診断で元気消失や嘔吐、
下痢といった臨床症状がない場合。 - 進行度
初期(ステーシ゛1~2)の症例は
長期生存できる可能性が高くなります。 - 細胞タイプ
リンパ腫の細胞には、大きく分けて
B細胞型とT細胞型があり、
B細胞型のほうが長生きする可能性があります。
その他の予後因子には
下記の通りです。
治療しなければどうなる?
「リンパ腫を治療するべきでしょうか?」
と言う質問はよくあります。
初期で見つかったリンパ腫は
自覚症状がほとんどありませんが、
この病気は悪性腫瘍です。
ほとんどの場合は、
急速に進行して
全身の臓器に障害を起こして
死亡します。
早めに診断を確定し、
治療を開始することが
重要です。
完治はする?
この病気を完治させることは
犬では難しいとされています。
数年単位で
発病を抑えることはできても、
いずれ
再発するからです
(人の医療では骨髄移植の技術で
完治できる病気ですが、
現段階では犬の骨髄移植は
技術的に難しいとされています)。
ただし、
治療をしなければ
生存期間は10~99日とされています。
化学療法が効けば
1年以上生きる子も
珍しくありません。
これは大変な違いです。
なぜなら
寿命から考えると、
動物にとっての1年は
人の5年間に匹敵するからです。
犬のリンパ腫の予防法
最も確実な予防法は、
犬の体を
よく触ることです。
リンパ腫は
初期に発見すれば、
長期生存が見込める病気です。
飼い主さんが
体表リンパ節の触り方を覚えて
チェックすれば、
直せる確率が高くなります。
犬のリンパ腫に良い食べ物・食事の注意点
現時点で
リンパ腫に良い食べ物は
わかっていません。
ただし、
既にリンパ腫にかかってしまった動物には、
長期の治療に耐えるため、
しっかり栄養補給をしてあげる
必要があります。
抗がん剤治療中は
食欲が落ちるため、
食事を保温したり、
温かいチキンスープを
かけたりすることで
嗜好性を高める工夫が必要です。
犬のリンパ腫に効くサプリメント
リンパ腫を改善させる
サプリメントはありませんが、
「βグルカン製剤」
(商品名D-フラクション・イムダインなど)は
食欲増進効果や
免疫増強効果を期待して、
抗がん剤治療と
併用されることがあります。
まとめ
犬のリンパ腫は早期発見・早期治療
リンパ腫には
さまざまなタイプがあることが
お分かりいただけたでしょうか。
まずは、
初期の段階で見つける事が
重要ですから、
お家のワンちゃんの
リンパ節を触る練習から始めましょう。
もし腫れているリンパ節があれば、
動物病院で検査をしていただく事を
お勧めします。
この病気が完治しないと聞いて、
落胆される飼い主さんも
多いのですが、
現在の医療では
治療によって多くの場合、
正常な生活を送ることが
可能になります。
治療の際、最も多い過ちは
- 副作用を気にして十分な治療をしない
- 状態が悪い症例に強すぎる治療をする
この2点は
矛盾しているようですが、
副作用を気にしすぎては
治る病気も治りません。
また、
プロトコールだけにとらわれず、
症例の状態に合わせて
治療する必要があります。
後悔しないためにも
獣医さんとよく相談をして、
最適な治療を
選択されるとよいでしょう。
PR
「健康寿命」カテゴリーの関連記事
「健康維持」カテゴリーの関連記事
「健康食」カテゴリーの関連記事
「犬がぐったり」カテゴリーの関連記事
「犬のがん」カテゴリーの関連記事
「犬のリンパ腫」カテゴリーの関連記事