犬のバベシア症!原因や対策、治療法って?

公開日:2024/10/31 / 最終更新日:2024/10/31
犬のバベシア症とその原因
バベシア症は
バベシア属の吸血性原虫、
マダニなどによって
引き起こされる
寄生虫感染症です。
バベシアという
小さな寄生虫が
犬の血液中の赤血球に
直接感染し、
赤血球を壊し
貧血などの症状が見られ、
最悪の場合
死に至るような
とても怖い感染症です。

犬のバベシア症は、
ダニ媒介性の溶血性疾患であり、
新興感染症として
世界的に知られています。
感染は犬だけではなく、
牛や馬などでも
確認されています。
牛では
19世紀末期に
牛の熱病性ヘモグロビン尿症の研究を行っていた
ルーマニア人科学者
ビクトル・バベシュ(Victor Babes)によって
バベシア症の感染が
発見されました。
調べる限り、
日本での人や猫への感染は
報告は確認できません。
アメリカでは
人のバベシア感染が
報告されていますが、
犬に寄生する
バベシアとは
異なることが分かっています。
一方で
バベシア・ギブソニ(B. gibsoni)という種類の
バベシアは、
アメリカン・ピットブルテリアや
土佐犬を主とした闘犬や、
犬同士の咬傷による、
汚染血液を介しての
感染経路も
多数報告されています。
これらの犬は、
バベシアの保虫宿主
(寄生虫が体内に寄生している状態)であると
考えられています。
このことから、
感染サイクルにマダニを含まない、
非節足動物媒介性
(ひせっそくどうぶつばいかいせい)の感染経路にも
注意しなければなりません。
バベシアの種類
バベシアは
100種以上存在していますが、
犬に病原性を示すのは
大型種のバベシア・カニス
(Babesia canis)および、
小型種のバベシア・ギブソニ
(B. gibsoni)のみであると
言われています。
一般に
バベシア・ギブソニは、
バベシア・カニスよりも
病原性が
高い傾向にあることから、
臨床的に
重要視されています。
犬バベシア症の発生は
マダニの生息地域と
一致します。
バベシア・カニスを媒介する
マダニは
沖縄県や九州地方に
限定されますが、
バベシア・ギブソニを媒介する
マダニは、
日本の至る所に
生息しています。
2010年には
全国47都道府県において、
3625匹が
バベシア症と診断され、
そのうち
26匹
が関東地方で診断されています。
犬のハ゛ヘ゛シア症病原体には
バベシア・ギブソニとバベシア・カニス、
バベシア・ヴォーゲリおよび
バベシア・ロッシがよく知られており、
種ごとに
分布が異なるものの
世界中に広く
分布しています。
その他にも
アメリカ合衆国
カリフォルニア州南部で確認された
バベシア・コンラッドなど、
犬に感染するバベシア原虫も
複数報告されています。
2010年における関東地方での
バベシア症診断頭数
- 茨城県 3頭
- 栃木県 4頭
- 群馬県 0頭
- 埼玉県 5頭
- 千葉県 3頭
- 東京都 7頭
- 神奈川県 4頭
バベシアとマダニの生活環
バベシア原虫は
マダニを媒介し、
犬の赤血球に寄生します。
赤血球に感染した
バベシア・ギブソニは
血液塗抹上で小型(約1×2.5μm)、
多形性の構造物として観察されます。
バベシア・ギブソニ感染症は
マダニを介した伝播の他、
胎盤感染、輸血による感染、
直接的な血液の接触によっても
感染すると考えられています。

媒介するマダニは
- フタトゲチマダニ
- ツリガネチマダニ
- ヤマトマダニ
- クリイロコイタマダニ
が知られています。
このマダニは
全国的に分布していることが
わかっています。

バベシア症にかかりやすい環境や犬
バベシアは
マダニなどを介して
感染するため、
マダニが生息しやすい所を
避ける必要があります。
犬種によって
バベシア症になりやすい種類が
あるわけではありませんが、
闘犬などは
噛み合うことがあるため
汚染血液を介して
感染する可能性が高くなります。
西日本などの暖かい地域
(しかし最近では日本中で見られている)
- 草むら
- 予防をしていない犬
- 闘犬

犬のバベシア症の症状
バベシア症の
主要な臨床症状として、
慢性~甚急性(じんきゅうせい)の
貧血があげられます。
原虫寄生によ
る直接的な赤血球の破壊や、
抗赤血球抗体、
赤血球の酸化障害および
浸透圧脆弱性による、
赤血球貪食活性増加により、
血管内および
血管外溶血を起こします。
これにより、
発熱や溶血性貧血、
ヘモグロビン尿などの症状を
示します。
中でも
バベシア・ギブソニ感染で
特徴的なのが
血小板減少で、
臨床でしばしば遭遇する
症状です。
血小板減少の機序として
以下のような
報告がされています。
- 血管内皮障害により、微小血管血栓傾向を示し、
血小板が消費される。 - 自己抗体が産生され、血小板と結合することで、
細網内皮系により除去される。 - 慢性感染においては、髄外造血による
脾腫(ひしゅ)が原因となり、循環血小板数が減少する。

予防法
バベシア原虫が感染するには
マダニが犬に
2~3日寄生することが
必要とされています。
そのため
マダニが寄生し始めてから
すぐに
動物病院での処置や検査を行うことが
大切です。
- マダニが寄生しないように薬による予防が一番効果的です。
暖かい地方では、マダニの寄生率は高く、
薬剤を使用しても感染しているケースも存在します。 - 薄手の洋服を着させる。夏ということもあるため、
熱中症に気をつけながら蚊の予防としては、
人と同様に洋服を着させると良いでしょう。
なるべく、手足も隠れるものが理想的です。 - 効果は乏しい可能性はありますが、
アロマなどペット用虫除けスプレーを使用します。 - 草むらなどやペットが集まる場所などに生息します。
なるべくいかないようにした方がいいかもしれません。

犬のバベシア症の対策と治療法
飼い主さんが
最初に気がつく症状としては、
元気消失、
もしくは血尿です。
元気消失は
さまざまな疾患で起こりうる
症状でありますが、
犬の元気消失は
重症化されているケースが多く、
すぐに
動物病院を訪れた方がいいでしょう。
血尿が進行し、
貧血に進むと
2~3日で死に至ることもあるため、
こちらもすぐに
動物病院に行きましょう。
マダニが愛犬に寄生していた場合は、
手など直接触らず、
専門機関を訪れてください。
さらに、
強引に取ろうとすると
マダニの口器が残ってしまい、
皮膚炎などを起こすことが
知られています。
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検査や診断方法
バベシア症を
迅速かつ簡単に診断する方法は、
血液塗抹標本より、
バベシア原虫を検出することです。
しかし、
感染初期や慢性期、
および
キャリアーの犬(保菌犬)では、
原虫寄生率は低く、
血液塗抹中に
原虫を検出することは
困難といえます。
その際は、
検査を複数回重ねることで、
検出感度が
上がることがあります。
クームス試験は、
(赤血球の細胞膜にある抗体が
検出されるかを検査する試験)
重度貧血を呈する症例において、
約90%で陽性を示します。
同じく
クームス試験陽性を示す、
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と
バベシア症とでは、
治療法が全く異なるため、
鑑別が重要です。
しかし
二つを臨床症状で
鑑別するのは困難であるため、
バベシア症を
確実に診断するために、
血液中の
バベシア抗原遺伝子、
および
バベシア抗体を
検出する必要があります。
また、
これらの検査を
組み合わせることで、
感染状況を把握することが
可能です。

どのような治療方法があるのか
現在、
バベシア症の治療として、
抗原虫薬や抗マラリア薬、
及び
抗生物質が使用されています。
しかし
どの薬剤においても、
その効果は
症状の緩和に留まり、
バベシア原虫を
体内から完全に排除することは
出来ないのが現状です。
治療薬の種類
これまで
バベシア症の治療として、
- ジミナゼンアセチュレート
- ジプロピオン酸イミドカルブ
- 硫酸キヌロニウム
- トリパンブルー
- イセチオン酸ペンタミジン
- イセチオン酸フェナミジン
及び
パルバコンといった
薬剤が使用されてきました。
中でも、
ジミナゼンアセチュレートは、
国内で
容易に手に入ったことから、
しばしば使用されてきましたが、
治療後も高確率で
バベシア症の再発が起こること、
犬においては
安全域が狭いことが
明らかとなっています。
さらに、
副作用として
- 嘔吐
- 注射部位の疼痛
- 沈鬱
など軽度なものから、
- 神経症状
- 低血圧
- 副交感神経興奮
- 昏睡
- 運動失調
- 眼振
- 痙攣
および死亡といった
重度なものまで
報告されています。
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農林水産省に報告された
ジミナゼンアセチュレートによる
副作用の症例のうち
23%が死亡でした。
また、
抗バベシア薬には
薬剤耐性を獲得する例も
確認されています。
バベシア・ギブソニ感染に対して、
前述の治療に加えて、
クリンダマイシン、
メトロニダゾール、
及びドキシサイクリンによる
三剤併用療法、
または、
アトバコン及びアジスロマイシンの
併用療法が、
比較的有効であるとの
報告があります。
クリンダマイシンは
リボソームの50Sサブユニットに
結合することで、
ペプチド結合を阻害します。
バベシア感染症において、
パラジテミア
(血液中原虫寄生率)の進行を抑制し、
症状を改善すると
言われています。
しかし、
ジミナゼンアセチュレートは
隔日4回投与で
効果が出るという
報告があるのに対して、
クリンダマイシンは
効果が出るまでの期間についての
明確な報告はありません。
副作用、
治療期間などを
飼い主にインフォームし、
治療法を選択すべきだと
思われます。

犬のバベシア症の予後
投薬の副作用など、
治療には
さまざまな問題点があることは
事実です。
しかし、
致死率も高いことから
治療の選択をする必要はあります。
また、
再発も起こりやすいことを考慮し、
定期的な
再検査が望まれます。

まとめ
犬のバベシア症は予防が大切!
バベシア症は
感染後に
完治することが難しく、
薬の副作用に対する
懸念もあります。
大切なのは
予防だということを
ご理解いただけたでしょうか?
愛犬と一緒に
森に出かけたり、
原っぱで遊んだりすることも
あると思います。
そのような時は
虫除けのグッズなどを使い、
遊んだ後
洗ってあげている時に
マダニに寄生されていないかなどを
しっかりと
確認するようにしましょう。

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