犬のストレスサイン!原因や症状、ストレス解消法って?
公開日:2022/12/22 / 最終更新日:2023/11/08
犬のストレスとは
ストレスとは
「外から力が加えられたときに
物体に生じる歪み」
のことを指します。
風船を外から
ググッと握りつぶすと凹みますが、
この凹んでいる状態が
「ストレス状態」で、
凹ませる力のことを
「ストレッサー」といいます。
生物学的なストレスとは
「さまざまな外部刺激(ストレッサー)が
加わった場合に生じる生体内の歪みの状態」
を指します。
ストレス反応を引き起こす
外部刺激は、
すべてストレッサーとなるため、
生活環境や社会的接触は
すべてストレッサーになり得ます。
ストレッサーの種類
- 物理的ストレッサー(寒冷・高温・熱傷)
- 化学的ストレッサー(酸素・薬物・飢餓・化学物質)
- 生物学的ストレッサー(細菌・ウイルス)
- 心理的ストレッサー
犬の心理的ストレッサーとしては、
恐怖や不安を感じる
- 「自然現象」(雷・台風)」
- 「音(花火・工事の騒音)」
- 「飼い主との関わり」
- 「知らない人との関わり」
- 「他の犬との関わり」
が含まれます。
一般にストレスがかかると表現される時の、
そのストレッサーは
4つ目の心理的ストレッサーを
指していることがほとんどでしょう。
犬のストレスの原因
犬にとってのストレスは、
物理的・化学的ストレッサーである
- 「暑すぎる環境」
- 「寒すぎる環境」
- 「飢餓」
- 「中毒」
などはもちろんのことです。
ただ、
あえてそうした
ストレスを与える飼い主さんは
いないでしょう。
問題は、
心理的ストレッサーです。
何が心理的ストレッサーになるかは
犬それぞれの経験によって
異なります。
この心理的ストレッサーは、
大きく2つに分類されます。
1つは、
嫌なことが起こる
「嫌ストレス」、
もう1つは
やることがなくて
ストレスになる
「暇ストレス」です。
嫌ストレス
その犬にとって何が嫌
(嫌悪刺激・不快)ストレスになるかは、
よく観察する必要があります。
犬の表情や
ボディーランゲージを見ることによって、
その状況で
犬が快適なのか、
不快なのかは
ある程度判断できます。
- 「吠え続けている状況」
- 「震えている」
- 「パンティングしている」
- 「何回もあくびを繰り返す」
といった場合は、
犬にとっては
不快な状況といえるでしょう。
事例1
ドッグランが好きだからと
ドッグランに連れて行くものの、
他の犬が怖くて
吠えっ放しで終わるという場合、
自由に走り回ること自体は
犬にとって
楽しい経験になるかもしれませんが、
他の犬との接触は
嫌いな刺激であり、
ストレスになっていることが
考えられます。
飼い主は
その犬にとって
良かれと思ってやっているものの、
実は
嫌な経験のほうが多い状況です。
事例2
知らない人が
近づいてきたときに
お腹を見せるという行動は、
「お腹を触ってほしい」と
勘違いされやすいですが、
本当は知らない人が怖くて
- 「私に危害を加えないで」
- 「降参」
という意味であることが
多いです。
人の方がそれに気づかず、
お腹を執拗に撫でまわしたら、
強いストレスになるでしょう。
事例3
犬を撫でる行為も
ストレスにつながることが
しばしばです。
わかりやすいのは、
撫でようとして手を出すと
始めは撫でさせるものの、
しばらく撫でていると
咬んでくる場合です。
これは
撫でられるのが嫌で
咬んでいる可能性が高いと
考えられます。
犬は我慢強いですから、
本当は嫌だけど
我慢して撫でさせている犬も
たくさんいます。
そうした犬では、
撫でている時に
リラックスしておらず
身体が固くなっていたり、
撫でると興奮することが
観察できるでしょう。
大切なのは、
飼い主が
犬の快・不快の表情を
読めるようになるということです。
それができれば、
その犬にとってのストレスが
何かを判断することが
できるようになるでしょう。
暇ストレス
文字通り、
犬が暇すぎて
ストレスになるというものです。
留守番が長い犬や、
家族との
コミュニケーションの機会が
得られていない犬に
発生します。
そもそも、
現代の犬は暇です。
犬は、その昔、
狩りを手伝ったり、
家畜を追い回したり、
あるいは、
自分で野生動物を捕まえたり、
食べられそうなものを
漁ったりして
ご飯を得られていたわけです。
毎日のご飯を得るために
必死に活動していました。
しかし、
今となっては
「ご飯は2分で終了」
なんて犬も
少なくありません。
現代と昔の犬の行動の違い
行動学の用語では、
ご飯を探す行動のことを
「欲求行動」、
ご飯を食べる行動のことを
「完了行動」といいます。
本来動物は
「欲求行動」の後に
「完了行動」があり、
その組み合わせで
行動が完結します。
ご飯を得る行動では、
- 「獲物を探す」
- 「忍び寄る」
- 「飛びかかる」
- 「追いかける」
- 「捕まえる」
- 「咬む」
- 「振り回す」
などの行動が
欲求行動に当たります。
そして、
仕留めた獲物を食べる行動が
完了行動です。
仕事をする犬の場合、
品種改良によって
欲求行動の一部が
強化されており、
それが仕事をする上で
役立っています。
現代の犬では、
欲求行動が一切無く、
いきなり
フードが提供されます。
これでは
犬本来の行動を
表現することができず、
文字通り欲求不満になります。
この欲求不満が
ストレスになるのです。
暇ストレス対策
本来、犬が持つ
「生得的(本来備わっている先天的なもの)」
行動の中で
「ご飯を探して、食べる」
という行動は、
その中心となります。
犬の生理的な行動としては、
ご飯を食べる行動のほかにも、
仲間との
コミュニケーションを図る行動や
生殖に関わる行動などがあります。
動物は、
生得的行動を
表現することのできる
環境であれば
過度のストレスを
受けにくくなりますが、
そうでない環境だと
欲求不満からの
暇ストレスを感じやすくなります。
犬では、
生殖に関わる行動は
不妊去勢手術を行えば
抑えられますので、
特に「ご飯を得るための行動」と
「仲間とのコミュニケーションを図る行動」を
表現できる場や、
機会を提供することで、
暇ストレスを軽減できます。
犬のストレスとの適度な付き合い方
嫌ストレス
持続的なストレス状態は
心身をむしばみ、
異常行動や
身体疾患の原因になります。
そのため、
ストレスがかかりすぎる状況は、
できるだけ避けましょう。
先に述べたように
動物を風船に例えると、
外界からの刺激によって
風船の形がゆがんだ状態を
ストレス状態と呼びます。
その刺激が無くなれば
元の形に戻りますが、
過剰な刺激が加えられた場合は
どうでしょうか?
破裂して
元には戻らなくなります。
大怪我をして障害が残ったり、
虐待を受けて
精神的な
トラウマが残る状態が
これにあたります。
暇ストレス
一方で、
必ずしも
できるだけストレスを無くすことが
良いとは限りません。
ポテトチップスの袋は、
富士山の上では
パンパンに膨れます。
これと同じように、
生体に加えられる刺激が少ないと
形を保てず、
健康な状態を維持できません。
例えば、
動物園のシロクマが
ずっと左右に揺れている行動を
見たことはありませんか?
あれは
「常同行動」といって、
無目的に
特定の動きを繰り返してしまう
行動の疾患です。
自然環境の中で生まれる
自然な行動が表現できないことが
その原因の1つと
考えられています。
ストレスは
避ければいいものではありません。
酸素やご飯のように、
適度な量を、
身体に摂取することで
健康な心と体が作られるのです。
子犬時代のストレスへの対応
ストレスは何でも避ければいい
というものではありません。
最近は
飼い主さんが
ストレスに対して過敏になっており、
むしろストレスにさらすことが
足りない状態の犬が
増えているように感じます。
初めて散歩に行ったときに
震えて動けなかったために、
それ以来散歩には行かせていない
という話もよく聞きます。
確かに
初めての散歩自体は
子犬にとってのストレスになりますが、
それを乗り越えなければ
社会で生きていくことはできません。
子犬時代に
重要なことは、
ストレスを避けることではなく、
ストレスにさらすことです。
社会化期にすべきこと
「子犬の時期のストレスは買ってでも与えろ」
と言えるくらい重要です。
「パピークラス」
(子犬のしつけ教室)では、
軽度のストレスを与えて、
ストレスに強くし、
生きる力を育む
取り組をします。
これが社会化の本質でもあります。
子犬の時期は、
今後の生活で経験する
- 「知らない人との接触」
- 「知らない犬との接近」
- 「知らない場所に行くこと」
- 「身体を触られること」
などの状況に
積極的かつ慎重にさらし、
ストレスへの免疫を
高めていくことが大切です。
成犬の場合のストレスへの対応
子犬時代にストレスに
さらすことがなかった犬では
特に、成犬になってから
さまざまな状況に
ストレスを感じて
「ストレスサイン」が
出ることはよくあります。
もちろん、
ストレス対応力が高い犬でも
ストレスを感じないわけではなく、
うまく対処しているだけで
さまざまなストレスサインを出しています。
- 「あくびをする」
- 「身震いをする」
- 「首をかく」
- 「震える」
- 「隠れる」
- 「固まる」
- 「吠える」
- 「牙を見せる」
など、
さまざまなサインがあります。
成犬をストレスにさらす必要性
成犬は
子犬よりも
柔軟性が低いことがポイントです。
成犬の
ストレスへの対応について
重要なことは
「その犬にとって、ストレスを受ける状況は、
どこまで必要なのか?」
を考えることです。
飼い主さんの中には、
「知らない人にも挨拶できるようにしたい」
という考えの方もいます。
しかし
考えてもらいたいのは、
- 「愛犬は知らない人と関わりたいのか?」
- 「関わる必要があるのか?」
という点です。
知らない人と
仲良くしてほしいというのは
飼い主の願望です。
性格が固まっている
成犬の場合、
飼い主の願望を押し付けて
知らない人や犬と
仲良くさせようとするのは、
その犬の個性を
尊重しているとは言えません。
犬に繰り返し
ストレスをかけてまで
乗り越えさせる
必要がある事なのかどうか、
飼い主さんが
しっかり判断する必要があります。
どうやってストレスを克服するか
外出時の不安については、
フードを携行することにより
ストレスを和らげることが
できるかもしれません。
フードを食べる行為は、
犬をリラックスさせる
効果があります。
少し不安を感じている場所では、
嗜好性の高い
フードを与えることにより
落ち着きを取り戻すことができます。
また、
普段から落ち着ける場所で
- 「オスワリ」
- 「フセ」
- 「マテ」
といった
トレーニングを行っておくことも
重要です。
犬が不安を感じやすい環境でも、
飼い主が普段通り
- 「何をしていればいいか」
- 「どこにいればいいか」
指示してくれている状況であれば、
不安を軽減することが
できるでしょう。
犬のストレスによって起こる病気
持続的な
ストレス状態に置かれた犬は、
自律神経の働きが乱れたり、
ストレスホルモンが
分泌されたりすることによって、
心身の病気を
引き起こしやすくなります。
ストレス反応は
「非特異的な反応」と呼ばれ、
特定の何かの病気を
引き起こすわけでは在りませんが、
その犬の弱い部分で
病気を引き起こします。
例えば、
皮膚の痒みがある犬では、
強いストレスを感じることで、
痒みが強くなったり、
下痢をしやすい犬では、
強いストレスによって
下痢が起こるかもしれません。
ホテルに預けることで
ストレスを感じた犬が
長時間排泄できなくなり、
膀胱炎などの
尿路系の疾患を引き起こすことも
あるでしょう。
このように
「ストレス=特定の疾患」
ということではなく、
ストレスは
あらゆる疾患の
原因となっていきます。
特に関係することが多い領域は
- 「皮膚」
- 「消化器」
- 「泌尿器」
- 「行動」
といえるでしょう。
犬のストレス解消法
最も基本的な
ストレス解消法は散歩です。
どれだけ小さい犬でも、
1日2回の散歩は必要です。
散歩に行き、
日光を浴びながら、
いろいろな刺激を感じながら、
飼い主さんと
歩調を合わせて歩くこと、
これこそが
最高のストレス解消法でしょう。
「散歩が苦手で……」
という方も
いるかと思いますが、
子犬であれば、
積極的に馴らしてほしいですし、
成犬であれば、
あまり不安を感じない
公園などから
徐々にチャレンジしていきましょう。
嫌ストレスの解消法
嫌ストレスへの対応法は、
子犬の場合は
ストレス対応力を
伸ばすための社会化、
成犬の場合は、
その犬の個性に合わせて
無理な願望を押し付けないこと、
どうしても必要な場合は、
徐々に
対応力を伸ばしていくための
トレーニングをすることです。
暇ストレスの解消法
これに対し、
暇ストレスの解消法は、
もっと楽し気な方法です。
というのも、
暇ストレスの解消のためには
「犬が心から楽しめることをやること」
が重要だからです。
犬が楽しめることとは、
犬がそもそも持っている、
「本来備わっている先天的なもの」を
表現できるようにすることです。
そして、
ご飯を得るための行動と、
仲間とのコミュニケーションを図る行動が
それにあたります。
ご飯を得るための行動
ご飯を得るための行動を
表現させる手立てとして、
知的玩具があります。
知的玩具とは
中にフードが入っている
おもちゃのことで、
転がしたり、
かじったりして、
中からフードを取り出します。
フードを取り出すという行動が、
ご飯を得るための
欲求行動となり、
ストレス解消につながります。
- 「匂いをかぐ」
- 「探す」
という行動も、
犬にとっては
非常に重要な行動です。
家の中でも
庭でも構いませんが、
フードを物陰に隠して、
探させるようにします。
犬は
フードの匂いを鼻で探して、
見つけて食べることができます。
匂いをだどって餌を探すという
生得的な行動を
引き出すことができます。
「生得的(本来備わっている先天的なもの)」
仲間とのコミュニケーションを図る行動
仲間との
コミュニケーションを図る行動としては、
飼い主との
トレーニングが一番です。
犬との関わり合いでは
撫でることが中心になりがちですが、
撫でることは
犬同士の関わりの中では
大きな比重を占めるものでは
ありません。
トレーニングは、
飼い主が何か意図を伝え、
その意図を犬が理解し、
行動として示して、
それを飼い主が褒める
というプロセスです。
そこには
犬と人との対話があります。
犬は
一方的な関わりではなく、
双方向の関りを求めており、
撫でるだけでなく、
ちゃんとトレーニングを通じて
対話をすることを
飼い主に期待しています。
まとめ
犬のストレスとうまく付き合うことが大切!
- 嫌ストレスは犬の表情や
ボディランゲージである程度判断できます - 暇ストレスを軽減できるよう、
犬の生得的な行動を増やすよう心がけましょう - 子犬の時期は
「ストレスは買ってでも与える」ほど重要です - 成犬へのストレスは誰の願望で、
そのストレスが必要なのか考えましょう
誰もが、
愛犬をストレスから守りたい
と思っていると思いますが、
ストレスから守るのではなく、
ストレスとうまく付き合う方法を
身につけさせることが大切です。
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