犬に麻酔!リスクや必要な理由って?
公開日:2023/03/06 / 最終更新日:2023/11/08
犬に麻酔が必要な理由
ストレスや恐怖を軽減するため
動物病院に来る犬は、
多かれ少なかれ
ストレスを抱えています。
まったく問題のない犬もいますが、
なかには大きなストレスによって、
恐怖を覚え、
攻撃的になる犬もいます。
ストレスは
心臓や呼吸にとって
悪影響を及ぼし、
病気の悪化につながりかねません。
麻酔の使用は、
これらの負担の軽減につながります。
処置や検査を正確に行うため
犬が暴れると、
処置中の縫い方が雑になったり、
病気の診断に必要な
画像検査がブレたり、
必要以上に
時間がかかったりする恐れがあります。
麻酔を利用することで、
診療の質が
圧倒的に良くなります。
公衆衛生上の問題
診察・治療時に、
普段大人しい犬が
攻撃的になることは珍しくなく、
そういった状況になると、
飼い主さんや獣医師は
噛まれる恐れと
感染症のリスクが伴います。
さらに、一度
人に危害を与えることを覚えると、
場合によっては
家に帰っても、
嫌なことをあると
攻撃的になる可能性もあります。
麻酔とは
このようなトラウマから発生する
攻撃的行動を抑制し、
公衆衛生上の問題を
未然に防ぐことができます。
犬の麻酔の種類
全身麻酔
一般的に全身麻酔とは、
可逆的に犬の意識を失わせ、
筋肉をリラックスさせ、
痛みなどの生体反射を
抑える一連の方法です。
適切な全身麻酔を行えば、
麻酔から覚めた犬は
普通の生活に戻ることができます。
通常一つの麻酔薬では、
これらすべてを達成できないので
一般的には
いくつかの麻酔薬を組み合わせて
使います。
鎮静
比較的弱い麻酔である鎮静は、
犬の意識を完全に失わせず、
眠くさせたり、
意識を朦朧とさせたり、
落ち着かせたりすることができます。
全身麻酔は強力なので、
積極的な麻酔管理と
モニタリングを必要としますが、
鎮静は
比較的軽度の麻酔のため、
最小限の管理と
モニタリングで済みます。
日常的に使われるのは
鎮静であり
「鎮静をうまく利用できる獣医師=
犬をうまくコントロールできる獣医師」
と言えるでしょう。
犬の麻酔の使い分け
全身麻酔の場合
全身麻酔は、
犬に絶対に動いて欲しくない場合に
使用します。
簡単にいえば、
お腹を開けたり、
骨折を治したりするような
大きな手術に
必ず必要なのが全身麻酔です。
また、時間を長く必要とする
MRIなどの画像診断も、
動くと画像の質が落ちるため、
全身麻酔を使うことが多いでしょう。
鎮静の場合
鎮静は、
簡単な処置が必要な場合に
使用します。
鎮静は、
犬の意識を
完全に失わせるわけではありませんが、
意識を朦朧とさせるので、
強い刺激を与えた場合、
犬が多少動く可能性があります。
しかし、
刺激を与えなければ、
大きく動くことはありません。
短時間で簡単な処置、
- CT
- X線
- 超音波検査
などの
短い画像検査に適しています。
そのほか、
怖がったり興奮したり、
暴れたり噛みついたりする犬を
落ち着かせるためにも
鎮静は有効です。
犬の局所麻酔によくある誤解
よくある誤解として
「全身麻酔」は
全身に麻酔をかけ、
「局所麻酔」は
局所的に麻酔をかけると思われがちですが、
実は使い方が
まったく異なります。
目的の違い
「全身麻酔」と「鎮静」は
どちらも脳に作用して
犬を動かなくさせることを
主な目的としています。
強さが違うだけで、
ほぼ同じくくりの麻酔です。
一方、局所麻酔は
脳に作用しないため、
使用しても
意識ははっきりしていますが、
痛みを感じることはありません。
つまり、
局所麻酔とは、
局所の感覚神経を
完全に遮断させることによって、
痛みが脳に達しないようにする
処置です。
従って、
「麻酔」というよりも
「鎮痛方法」として
認識するほうが正しいでしょう。
局所麻酔をするには麻酔が必要
局所麻酔をするためには、
犬に大人しくしてもらわないといけません。
麻痺させたい神経の側に
針を進めて局所麻酔を注射するため、
正確な作業となります。
従って、
通常は局所麻酔を使用する場合には
鎮静や全身麻酔を必要とします。
簡単な局所麻酔であれば
鎮静や全身麻酔を
必要としない場合もありますが、
犬があまりにも
痛がっているのであれば、
少なくとも鎮静を使うべきでしょう。
愛犬に手術が必要になった場合には、
痛みを感じて欲しくないと思うので、
局所麻酔を使ってもらうように
獣医師に相談してみましょう。
犬の麻酔のリスク
現在の麻酔薬は
昔と違って非常に安全です。
麻酔関連死亡率が
高いように思われがちですが、
実際は麻酔後での死亡率が
高いことが知られています。
特に麻酔後
2~3時間は要注意です。
薬によっては
拮抗薬が存在するので、
拮抗薬を使用すると
すぐに麻酔から醒ますことができます。
さらに短時間作用型の
麻酔薬が主流であるため、
麻酔薬は
すぐに体の中からなくなります。
仮に何らかの原因で
麻酔薬による
アナフィラキシー反応が見られても、
麻酔中であれば
すべてのサポートと治療が
瞬時に受けられる状況にあるので、
麻酔中でない場合と比べると
安全といえるでしょう。
麻酔のリスク評価
動物麻酔のリスクを推し量る方法として
最も一般的なのが、
通称「ASAステータス」です。
ASAステータスは
1から5まであり、
1は健康な状態、
5は重症な状態をいいます。
ASAステータスは、
その動物の
その時点での総合状態評価で、
複数の要因によって
決定されます。
例えば
持病があったとしても、
その病気が
内服で安定しているのであれば
ASA1~2以内になり、
老犬でも
若い犬と同じように
走り回れるのであれば
ASA1~2以内になります。
愛犬に
麻酔をかける場合には必ず、
どのASAステータスに当てはまるのか
獣医師に
確認することをお勧めします。
まとめ
犬の麻酔は適切な処置を行うための手段
- 麻酔は犬の恐怖心やストレスを軽減し、
適切な処置を行うための手段 - 麻酔には「全身麻酔」と「鎮静」の2種類がある
- 局所麻酔をするには麻酔が必要
- 麻酔関連死亡率は低い
愛犬が麻酔をするときは、
どのASAステータスに当てはまるか確認しましょう
麻酔は犬のストレスや
恐怖を軽減するための
必要不可欠なツールです。
犬の麻酔関連死亡率は
決して高くありません。
安心して任せられる
獣医師としっかりと話し合い、
麻酔を過度に怖がらず
病気を乗り切りましょう。
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