犬に穀物はダメ?グレインフリーが良いって本当?
公開日:2022/10/06 / 最終更新日:2023/05/29
穀物とは!
穀物の定義は
さまざまありますが、
イネ科植物に属する稲、小麦、
トウモロコシや、雑穀と呼ばれる
ヒエ、アワ、キビを指すことが
一般的です。
広い意味では
ソバやマメ科植物を含むこともあります。
穀物は「タンパク質」「脂質」とともに
三大栄養素の一つ
「炭水化物」を多く含みます。
英語で穀物はグレイン(grain)と呼び、
穀物が含まれないドッグフードは
グレインフリードッグフードと
呼ばれています。
グレインフリードッグフードが流行っている理由
最近よく聞く
「グレインフリードッグフード」ですが、
いつ頃から流行り始めたのでしょうか?
Google検索のトレンドを調べてみると、
全世界で「grainfree」の検索が伸び始めたのは
2012~2013年頃というのがわかります。
日本では少し遅れて
2014年頃から「グレインフリー」が
検索されるようになりました。
なぜこの時期に
流行り始めたのか
定かではありませんが、
グレインフリーが
使われるようになった理由の一つとして、
2011年に話題になった
「汚染された中国米」が挙げられます。
実際、アメリカでは
2007年頃から
中国産ペットフードを食べた
犬や猫の死亡が相次いでおり、
「中国産の穀物を使ったペットフードへの不安感」が
「新しいペットフードへの関心」に
つながったのでしょう。
確かなのは、
流行った理由に
「グレインフリーが良い」という
発見があったわけでも、
裏付ける論文が出たわけでもない
ということです。
ペットフードメーカーは
飼い主さんたちの
不安感をうまく捉えて
新たな市場を創り出したわけですから、
マーケティング戦略の
成功事例と言えるでしょう。
グレインフリーが良いとされる根拠
「犬に穀物は必要ない」とされる根拠として、
しばしば以下の主張が
挙げられます。
- 犬はもともと肉食だから穀物はいらない
- 穀物はアレルギーの原因になりやすい
- 唾液に分解酵素が無いので消化できない
これらは本当に
犬に穀物が必要ない
根拠になるのでしょうか?
それぞれ検証してみましょう。
1、犬はもともと肉食だから穀物はいらない?
この主張は
「オオカミ論」とも呼ばれます。
犬の祖先はオオカミで、
オオカミは肉食だから
犬も肉食であるべきだというものです。
しかし、
犬がオオカミから分化したのは
1万5000年以上前とされ、
人との暮らしの中で
雑食へと変化していきました。
犬の雑食化は
科学的にも証明されています。
2013年に学術雑誌「ネイチャー」に
掲載された論文では、
オオカミと犬の遺伝子を比較したところ、
犬にはデンプンの消化に適応する
遺伝子変化が見られたことが
報告されています。
犬はオオカミではありません。
長い年月をかけて
肉食から雑食へと適応し、
犬として進化してきたわけです。
なぜそれを太古の食性へと
戻す必要があるのでしょうか?
2、穀物はアレルギーの原因になりやすい?
この主張が
どこから生まれたのか不明ですが、
こちらも科学的とは言えません。
ドイツ・ミュンヘン大学の
ミュラー教授ら研究チームによると、
犬のアレルゲン食品として
最も報告が多いのは牛肉で、
乳製品、鶏肉と続きました。
穀類は4番目の小麦、
7番目のトウモロコシ、
11番目の米が報告されていますので、
穀類が特別アレルギーの原因になりやすい
食材とは言えないでしょう。
米にいたっては
アレルギーが出にくい食材とすら
言えそうです。
3、唾液に分解酵素が無いので消化できない?
私たちの唾液には
アミラーゼという消化酵素が含まれ、
口の中で食物のデンプンを
ブドウ糖に変化させます。
犬の唾液には
アミラーゼが含まれないため、
犬はデンプンを多く含む
穀類を消化できないと
言われることがあります。
しかし、アミラーゼは
口の中だけでなく
膵臓でも分泌され、
腸で消化が行われます。
人に比べれば
消化は得意ではありませんが、
犬が穀類を消化できない
というのは間違いです。
また、グレインフリーのドッグフードは
穀類が含まれないというだけで、
ほとんどが
炭水化物(デンプン)を摂取するため
豆類やイモ類などの
食材を配合しています。
唾液にアミラーゼが含まれないから
消化できないのであれば、
それらも消化できないことに
なってしまいます。
「犬は穀類を消化できないから
グレインフリーのドッグフードが良い」
という主張は、
矛盾しているわけです。
穀物のメリット・デメリット
デンプンを多く含む穀物は
炭水化物源になるだけでなく、
タンパク質や脂質、
ミネラル、ビタミンなどを
バランス良く摂る
栄養源にもなります。
それぞれ特徴がありますので、
代表的な穀物である
トウモロコシ、コーンスターチ、
小麦粉、米について
メリット・デメリットを紹介します。
トウモロコシ
トウモロコシには
炭水化物だけでなく、
皮膚の健康を保つ
リノール酸(オメガ6系脂肪酸)が
多く含まれています。
アレルギーの原因になりやすいと
思われがちですが、
実際は牛肉や鶏肉、
大豆に比べて
リスクが低い食材です。
トウモロコシは
デンプンを多く含むため、
ドライフードの形を保つ目的で
配合されることもあります。
安価なため
かさ増し目的で使われることも多く、
それらは犬の健康に関係ない
人の都合で配合されています。
原材料の欄で
肉類より先にトウモロコシが
記載されているフードは
オススメしません。
コーンスターチ
その名の通り
トウモロコシを原料として、
デンプンだけを取り出したものが
コーンスターチです。
熱を加えることで
消化効率の良い
エネルギー源になるとともに、
ウェットフードの
とろみ付けとして
使われることも多い食材です。
小麦粉
小麦粉は
デンプンとタンパク質を含んだ食材です。
こねると粘りが出るのは
グルテンと呼ばれる
タンパク質によるもので、
人の場合、
消化が苦手な
グルテン不耐症や
消化器症状を引き起こす
セリアック病の場合があります。
犬も鶏肉に次いで
アレルギー報告が多く、
アイリッシュセッターはまれに
セリアック病と似た
グルテン過敏症を起こす
場合があります。
事前にわかっている場合は
グルテンフリーの
ドッグフードを選ぶ必要があります。
米
米は炊いた状態であれば
犬も消化することができ、
デンプンを多く含むため
エネルギー源となります。
タンパク質やカルシウム、
ビタミンなども含む
バランスの良い食材です。
グレインフリードッグフードで犬が死ぬ?
2019年、アメリカの食品医薬品局(FDA)が、
グレインフリーの
ドッグフードを食べている犬は
心臓病の一種である
拡張型心筋になりやすい可能性があると
発表して話題になりました。
グレインフリーと
心臓病にどれだけの関係があるか
明確にはされませんでしたが、
実際の商品名を挙げた発表に
疑いの強さが表れていると
言えるでしょう。
冒頭で紹介した通り、
グレインフリードッグフードは
ここ数年の流行りです。
科学的な根拠に基づいたものではなく、
「思想」から生まれた
新しい食事スタイルです。
それがどんな結果を
引き起こすことになるのか。
わかるのはこれからです。
正しいドッグフードの選び方
正しいドッグフードの選び方として、
「すべての子に◯◯というドッグフードが良い」
と言うことはできません。
犬は穀物を食べても大丈夫
ということを説明しましたが、
穀物のアレルギーがある子には
グレインフリードッグフードが
選択肢になるでしょう。
まとめ
- 犬に穀物はダメという思想は最近の「流行り」
- 良いとされる科学的な根拠は無い
- アメリカでは心臓病との関連性が指摘されている
犬の家族化によって、
「愛犬にも良いものを食べさせてあげたい」
と思う飼い主さんが
非常に多くなってきました。
しかし人と犬が摂るべき栄養は
異なりますので、
犬のごはんについては
犬の栄養の専門家に聞くのが一番です。
「犬に穀物を食べさせてはいけない」
という話に限らず、
「犬は◯◯を食べてはいけない」
「犬は◯◯を食べるべき」
といった話は
これからもたくさん出てくるでしょう。
それらが本当に正しいのか、
愛犬にはどんな
ドッグフードが適しているのか。
飼い主さんが
確かな情報をもとに
判断してもらえればと思います。
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