犬が自分の手足を噛む・舐めるのはなぜ?

公開日:2025/01/21 / 最終更新日:2025/01/21
犬の「かむ」には2種類ある
「かむ」とはいっても
「噛む」と「咬む」の2つのうち、
どちらを用いるかで
意味が大きく変わります。
噛む
「噛む」は
英語の
「chew(よくかむ)」のニュアンス。
奥歯でかみしめるイメージで、
咀嚼するという表現に近い。
咬む
「咬む」は
英語の「bite(かみつく、かみきる)」のニュアンス。
前歯や犬歯で、
刺したりちぎったりするイメージで
「咬傷」につながる
かみ具合のこと。
行動治療にとって
「噛む」と「咬む」では、
犬の
切羽詰まり具合が変わるため、
とても重要な
指標になってきます。
「噛む」行動でも
「咬む」行動でも、
原因は
同じものが考えられますが、
一般的に起こり得る
「噛む」という漢字に統一して
述べていきましょう。
もし愛犬が、
自分の足を「咬む」という方は
すぐに
近隣の行動診療が可能な
動物病院に
連れて行ってください。
行動診療科を実施している
動物病院一覧は
こちらです。

犬が自分の足を噛む理由
まずは
医学的原因がないか、
愛犬の体や様子を
チェックしましょう。
考えられる医学的原因

挙げたものの中で、
特に
脳神経疾患では
MRIやCTなどを撮影しないと
原因がわからないことも
あります。
行動学的原因も並行して考え、
治療の反応を見ながら、
場合によっては
精密検査も再検討していく
必要があります。
考えられる行動学的原因
医学的原因がないことを前提に、
行動学的に
考えられる原因は
以下が挙げられます。

擬人化をしすぎることも
誤解を招く場合がありますが、
まずは
「人間だったらどうなんだろう?」
という視点を持つことは
行動学的原因を考える上で
重要です。

犬が自分の足を噛む場合の対策
医学的原因がある場合
エリザベスカラーを使って、
噛むことを防ぐ
方法があります。
行動学的原因がある場合
大前提として
- 「散歩の時間が足りない」
- 「飼い主との関わり合いの時間が少ない」
- 「1頭で自由にさせているときに
何もやることを与えていない」 - 「落ち着いて寝られる環境がない」
など、
環境に問題がある場合は、
問題点を解決しましょう。
犬の基本的ニーズを埋め
合わせないにも関わらず、
犬をなんとかしようとすると
問題は悪化します。
犬が
噛む行動を起こすときの
環境や状況を
じっくり観察しましょう。
不可解な点が多い場合は
お近くの
行動診療科に
相談しましょう。
対策は、
犬が何によって
その「噛む行動」を起こしているかで
変わります。
もちろん
医学的原因があれば
その治療が最優先です。

犬が自分の手足を噛む実例
遊びの延長で家族を噛んだらケージに入れられ、
直後に手足を噛む
犬が遊んでいる間に
興奮して噛んでくることは、
上手く興奮が抑えられない場合に
よくあることです。
その度に
ケージに入れていると、
犬は
「もっと遊びたいのに遊べない!」
という葛藤を感じます。
葛藤という情動の矛先が、
手足を噛むという形に
転位した行動だと
診断されました。
関連記事
犬が興奮!理由と落ち着かせ方法って?
<対処法>
この家族においては、
愛犬の留守番時間が長い上に、
すぐ
ケージに入れられるため、
散歩の時間や
遊びの時間を
十分に取れていませんでした。
そうした場合、
犬の欲求を発散させる機会を
十分に設ける
必要があります。
人の在宅中は
できるだけケージから出し、
犬が遊びたいと思うような
知育トイを出しておくことも
良いでしょう。
ひとりでも遊ぶことができれば、
噛まれる機会も減り、
犬がすぐに
ケージに戻される機会も
減ります。
ケージに戻される機会が減れば、
葛藤が生まれる機会も減り、
次第に
足を噛むという行動は
減っていくでしょう。
手足を舐めるたびに注意されている
手足を舐めるたびに、
家族から「こら!ダメ!」と
注意されていましたが、
犬は特に
恐がる様子はなく、
むしろ
家族の方を見ながら
舐めていました。
そのうち、
段々と舐める行動が
頻繁に出てくるようになり、
関心を求める行動だと
診断されました。
<対処法>
飼い主が
怒っているつもりでも、
犬からしたら
「構ってもらえる」と
思っていることが考えられます。
他に注意を向ける
何かを事前に用意して、
退屈させない
必要があります。
犬が
人の関心を引こうとする前に
「オスワリ」「フセ」「マテ」「オイデ」
などを活用して、
飼い主が
犬の注意を引くようにしましょう。
「足を噛んで飼い主さんの注意を引きたい!」
という状態から
「足を噛まなくても相手してくれる」
という意識に変わり、
次第に
足を噛む行動が
減ってくるはずです。
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雷が鳴りそうなときはずっと手足を噛んでいる
雷がゴロゴロ鳴り始めると、
鳴り止むまで
ずっと手足を噛んでいました。
昔、
雷が家の近くに落ちて以来、
この行動が
毎回必ず生じていることから、
雷恐怖症の不安感や
恐怖感による
転位行動と診断されました。
<対処法>
対象となる刺激を
テレビの音や
雨戸を締めることで
軽減することはできますが、
回避することは
不可能です。
あまりに強い
恐怖感で寝られないのであれば、
一時的に
抗不安薬などを用いた
薬物療法も
治療選択のひとつでしょう。
可能であれば、
日頃から
雷の録音された音などを
小さい音量で
聞かせつつ、
同時に
オヤツを与えて
雷の恐怖感を
克服していくことも良いでしょう
(系統的脱感作と拮抗条件付け)。
雷の度に
少し気持ちを落ち着けた状態で
過ごせるという
経験を積むだけでも、
次第に
「雷は怖いけど、そのうち鳴りやむ」と
思ってくれるようになる
可能性もあります(古典的条件づけ)。
※紹介したケースは、
あくまで例として簡潔に表現してあります。
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まとめ
- 犬が噛む行動には理由があります
- 医学的原因によるものではないか観察しましょう
- 行動学的原因であれば犬の欲求を考えましょう
- 原因が分かったら原因に対するアプローチを
- 不安があれば、お近くの行動診療科に相談しましょう
犬にも
それぞれ個性があり、
家族の形もさまざまで、
いくつかの条件が
複雑に絡み合い
犬の行動が形成されています。
犬の数だけ
対応対策があります。
まず
愛犬の気持ちを尊重し
「なぜこの子はこの行動をするんだろう?」と
シンプルな気持ちで
犬の行動を理解することから
始めてみてください。

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