犬が仮病!見分け方や対処法って?
公開日:2024/08/05 / 最終更新日:2024/08/05
犬の仮病とは
仮病とは、
本人は病気でないことを理解しながらも、
何らかの利益のために
病気を偽ることです。
仮病は俗称で、
医学的には「詐病」が
正しい用語となっております。
そのため、
「仮病=詐病」として
扱わせていただきます。
しかし、
人医領域には、
どれほど診断のための検査をしても
医学的に説明できない、
けど身体症状を訴える状態があり、
そのことを
「医学的に説明困難な身体症状
(MUS:Medically Unexplained Symptoms)」と
呼んでいます。
MUSとは、
「何らかの身体疾患が存在するかと
思わせる症状が認められるが、
適切な診察や検査を行っても、
その原因となる疾患が見出せない病像」のことです。
MUSには、
以下の4点が含まれております。
- 未知の疾患による身体症状
- 医師の能力不足のために未診断のまま
放置されている身体症状 - 詐病および虚偽性障害
- 身体表現性障害などの多彩な病態や疾患
少し小難しい話になりましたが、
犬でも
こういったことは
あり得るのでしょうか?
残念ながら
1・3・4については、
「現状ではわかりようがない」
というのが現在の回答です。
「1、未知の疾患による身体症状」については
獣医療の発展を待つこと、
「3、詐病および虚偽性障害」
「4、身体表現性障害などの多彩な病態や疾患」
については
以下をご参照ください。
幸い、
「2、医師の能力不足のために未診断のまま
放置されている身体症状」については
セカンドオピニオンを受ければ
実は診断がつく
疾患だったということはあり得ます。
とはいっても
目の前の症状が、
一般の臨床医が気づきにくい
疾患である確率は
かなり低いでしょう。
3、詐病および虚偽性障害
詐病と類似した精神疾患で
虚偽性障害がありますが、
これは、
「あなたは病気である」と認められたい、
認められることを目的とした
精神疾患のため、
詐病とは分けられます。
犬に病気という概念は
認識できないので、
虚偽性障害は生じ得ません。
ミュンヒハウゼン症候群や
医者巡り症候群も
虚偽性障害の1つです。
4、身体表現性障害などの多彩な病態や疾患
身体表現性障害とは、
以下のような状態を指します。
適切な検査を行っても、身体的主訴
(身体が痒い、お腹が痛いなど)は
医学的に既知の一般身体疾患、
物質(乱用薬物など)の作用、
他の精神疾患によっては十分に説明できず、
その症状は、
臨床的に著しい苦痛、または
社会的、職業的、その他の領域における
機能障害を引き起こしており、
心理的要因(不安、恐怖、葛藤など)が、
症状の発症、重症度、悪化、持続性に
重要な役割を果たしていると判断され、
その身体症状は
意図的なものではない(嘘はついていない)。
しかし、
犬や猫などの動物においては
身体表現性障害という診断名はなく、
診断のしようもないので、
仮にあったとしても
「原因不明の跛行」「原因不明の疼痛」など、
「原因不明の○○」として判断され、
それが
日常的に支障をきたすようであれば、
対症療法が実施されるでしょう。
そして仮に
獣医療全般が発展してきて、
人と同じくらい
さまざまな病気が発見され、
診断されるようになったとしても、
今後犬と言葉で
コミュニケーションが取れない限りは、
「詐病」「身体表現性障害」などの
診断を下すことは不可能でしょう。
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仮病と思ってはいけません
仮に犬が
仮病をすると考えたときに、
利益は何かというと
「飼い主さんの関心を引くこと」が
一番に挙げられるでしょう。
もしかしたら、
「飼い主さんを避ける」
「オヤツなどの報酬をもらう」という利益も
場合によっては
あるかもしれません。
そして私の考えでは、
「犬に仮病という概念を持ち込むべきでない」
ということです。
「仮病」と一言にしてしまうと、
誤った認識が広がってしまうこと、
本当に疾患である場合がある
ことからです。
ネット上で
「犬 仮病」などの
キーワードで検索した際に
(もちろん獣医の専門書には
仮病や詐病といった項目はありません)、
- 「足を引きずっているけど走ることもある」
- 「咳が出る」
- 「朝元気がなくなっていて夕方にはすっかり元気だった!」
などといった
記事を見かけます。
また、
そういった状況で
動物病院に連れて行った際に、
「獣医さんに『仮病だね』と言われた」という
記事を散見します。
しかし、
獣医学的には仮病がないため、
「そう大事には至らない自然に治る状況なので、
飼い主さんを安心させるために言っている」
と思われます。
仮に
「仮病」といわれた症状が
- 「治っていない!」
- 「悪化している!」
- 「時間をおいてまた再発した!」
とのことであれば、
本格的な疾患を
考えていかなければなりません。
その際は
必要な検査を受けましょう。
犬の仮病と病気の見分け方
まずは気になっている行動が
- 「医学的疾患なのか」
- 「医学的疾患ではないのか」
ということは最重要です。
医学的に問題なければ、
次に
行動学的疾患を
考慮していくべきでしょう。
以下に
チェック項目を示します。
当てはまるようであれば、
医学的疾患を疑ってください。
- 誰もいないところでも起こる
- ずっとその行動をしている、またはその行動が繰り返し起きる
- 環境の変化は一切ない
- 飼い主との関わり合い方の変化は一切ない
- そもそも元気食欲がない
もし、気になる行動が
上記チェック項目に
当てはまるようであれば、
まずは
動物病院に連れていき、
大きな異常がないか確認しましょう
犬の仮病の理由
「持続的ないし断続的に仮病みたいな行動している」
→「必要な検査もした」→「自宅で大きな変化はない」
→「それでも特別に異常が見つからない」
という状況であれば、
行動学的疾患を
考えなければなりません。
犬が仮病のような
行動をする理由としては
大きく
以下の3つが考えられます。
- 関心を引く行動
- 回避行動
- 懇願行動
どういうことかというと、
例えば、
「関心を引く行動」であれば、
「少し動きを少なくしたら飼い主さんが構ってくれた」
→「飼い主さんの前ではあまり動かないようにしよう」
というように
動きが少ない方が
飼い主さんの気を引けるということが
学習されていきます。
また、
「回避行動」であれば、
「足を引きずる」
→「いつもちょっかいかけてくる子どもが無茶してこない」
というように
足を引きずることで
嫌なことが回避できるということが
学習されていきます。
「懇願行動」であれば、
「突然ギャンギャン鳴く」
→「飼い主さんが心配して
いつも与えないような特別美味しいオヤツをくれた」
というように
実際の物としての
報酬が与えられると、
突然ギャンギャン鳴くことにより
美味しいオヤツがもらえるといったことが
学習されます。
そうであれば、
対象となる人物が
目の前にいなければ、
そういった行動が
みられなくなります。
気になる方は
留守番カメラで
観察してみると良いでしょう。
まずは
その気になる行動に至る
きっかけ探しです。
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「関心を求める行動」とは
誰かが犬に対して
関心を向けることによって
強化されている行動のことです。
つまり、
「誰が」「どの犬に対して」「どんなタイミングで」
「どのように関心を向けて」「その際犬はどう反応して」
「どんな行動が多くなっているのか」ということを
確認しなければなりません。
「回避行動」とは
誰かが犬に対して行う
嫌なことが回避されたことによって
強化されている行動のことです。
つまり、
「誰が」「どの犬に対して」「どんなタイミングで」
「どのような嫌なことをして」「その際犬はどう反応して」
「どんな行動が多くなっているのか」ということを
確認しなければなりません。
「懇願行動」とは
誰かが犬に報酬を与えることにより
強化されている
せがむ行動のことです。
つまり、
「誰が」「どの犬に対して」「どんなタイミングで」
「どのような報酬を与えて」「その際犬はどう反応して」
「どんな行動が多くなっているのか」ということを
確認しなければなりません。
犬の仮病への対処法
「関心を求める行動」でも
「回避行動」でも、
きっかけがわかってしまえば
それぞれに対応しましょう。
一概に
「何をしたら改善される」
ということはありません。
一番重要なのは、
それぞれに応じた
「きっかけの排除」です。
架空の事例紹介
参考として
架空の事例を挙げてみます。
普段留守番が多くて
構ってもらう時間が短い、豆柴3歳のランちゃんは
「もっと飼い主さんと交流したい!」と
感じているとしましょう。
ここでたまたま、
ランちゃんが
足に違和感を感じて
右後ろ足をかばったときに、
飼い主さんが心配して、
家にいる間に何度も
ランちゃんを撫でたり、
そばにいてくれたりしたとします。
「右足をかばったら飼い主さんが構ってくれた」
→「飼い主さんの前では右足をかばおう」と
学習が起きると
右足をかばう仕草は
多くなるかもしれません。
しかし、
これは飼い主さんとの交流の中で
発生しているので、
留守番のときは
いつも通りの歩き方でいるでしょう。
じゃあどうするのかというと、
足をかばっているときは
目を向けず、
むしろ他の部屋に
いってしまうなどをすることにより、
「足をかばうことに関心がない」
むしろ
「足をかばったことにより
自分にとって不利益があった」と
認識させることにより、
足をかばう行動は
減っていくでしょう。
しかし、
これでは根本的解決にはなりません。
そもそも飼い主さんに
かまってもらう時間が短かった
ランちゃんですから、
まずは日常的に
コミュニケーションの時間を増やし、
生活に対する満足度を上げ、
次に、
行動療法を
実施していきましょう。
もし現実に
ランちゃんみたいな
犬がいるとするならば、
かまってあげる
時間が少なかったせいで
かまう行動をしなければならない
状況にいたため、
かまう時間を増やし
飼い主さんとのコミュニケーションに対する
欲求不満を解消するだけで、
足をかばう行動は
なくなっていくと思います。
※あくまで例なので、
わかりやすく「足をかばう」ことを取り上げてます。
しかし、
実際に足をかばうことがあれば
医学的疾患だと思いますので、
動物病院につれていきましょう。
まとめ
犬の仮病の前に常に健康管理意識を
動物に
仮病という言葉を
持ち込んで欲しくない理由は
3つあります。
- 「そもそも仮病という概念がないため、
誤った知識を広げてしまう」ということ - 「仮病と言ってしまうと、
それ以上の原因追及をしなくなる」ということ - 「仮病と思っていたが実は立派な疾患だった!」
という事態も起こり得ること
3であったときは
手遅れになりかねなく、
最悪な事態です。
全人類が
より有益な知識を共有できるように
「混乱を招く言い方はやめましょう」
ということが
一番伝えたいことです。
なので
一般の飼い主さんは、
仮に
「病気っぽくないかも」と思っても、
「どこかに病気が隠れているんじゃないか?」
という疑いの視点は
常に持っておき、
何かあれば
動物病院に行って
診てもらいましょう。
また、
病気じゃないと診断されても
行動が改善しない場合は、
お近くの
行動診療を実施している
動物病院を紹介してもらいましょう。
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