シニア犬(老犬)に多い病気!症状や健康診断の準備は?
公開日:2022/10/14 / 最終更新日:2023/05/29
シニア犬(老犬)の目安年齢
人では65~74歳の方を
前期高齢者、
75歳以上の方を
後期高齢者といいますが、
犬には 「~歳以上を『高齢犬』とする」
といった決まりはありません。
目安として、
人に換算して
おおよそ65歳にあたる
サイズ別の年齢です。
- 小型犬:12~13歳
- 中型犬:10~12歳
- 大型犬:8~10歳
ただし、加齢速度は
体格や犬種による差だけでなく、
個体によっても
大きく異なります。
まだ若いから
健康診断はしなくていいと
考えている方も、
中高齢に差し掛かる
5~6歳(体格問わず)からは
1年に1回、
高齢になってからは
少なくとも1年に2回は
動物病院で
定期健診を受けることを
おすすめします。
シニア犬(老犬)にみられる 加齢症状
散歩に行きたがらない
足の筋力や体力の低下から、
若い頃に比べて
積極的に歩く距離が
短くなります。
<対策>
歩きたがらないからといって
散歩をやめると
- 「筋力低下」
- 「関節拘縮(関節の動きが制限される)」
- 「骨量低下」
を引き起こし、
寝たきりへと進行するため、
適度な散歩を
継続することが大切です。
散歩中は視覚や聴覚、
嗅覚などの感覚器を用いる
刺激に多く触れるため、
脳の活性化にもつながります。
ただし、重度の関節炎や
椎間板ヘルニアなどが原因で
歩けない場合もあるので、
定期健診は
欠かさず行きましょう。
注意点
季節や天候で散歩の時間帯を
検討しましょう。
高齢になると
体温調節機能が低下するため、
夏の暑い時間帯や
大雨の日の散歩は
できる限り避けるように
してください。
夏は早朝や夕方、
冬は昼頃、
雨天の場合には
室内運動が良いでしょう。
表情や呼吸状態、
姿勢などに気を配りながら
- 「息切れする」
- 「足がふらつく」
- 「座って動こうとしない」
などが見られたら
無理せず休ませてあげてください。
距離ではなく、回数を増やす工夫を
現状の散歩コースの途中、
何度も疲れるようなら、
1回あたりの距離を短くして
回数を増やし、
急な坂道や
段差のない平坦な道を
選びましょう。
足腰が弱い子は
体型に合ったハーネスや
胴着を用いて
転倒しないように
支えてあげてください。
視力が低下する
目の病気や老化により、
視力が低下し、
目が白く濁ったり、
壁にぶつかることがあります。
<シニア犬に多い目の疾患>
- 白内障
水晶体とよばれる本来透明なレンズが白く混濁する病気 - 緑内障
眼球内にある水分(眼房水)の排出障害などで眼圧が上昇し、
視神経が圧迫され視力が低下する病気 - 核硬化症
水晶体中心部にある水晶体核が硬化し
透明度が低下する病気 - 角膜炎・結膜炎
外傷や細菌感染などで生じる目の表面膜の炎症
<対策>
- 柱や家具にはクッション材をつけ、怪我を防ぐ
- 階段口にフェンスなど設置して転落事故を防ぐ
- 段差をなくし、緩やかな傾斜のスロープを設置する
- 活動範囲にある家具や物の位置を調節し、新しいものを置かない
- 散歩コースを変更する場合には、少しずつ数日間掛けて行う
注意点
壁にぶつかって
脳震とうを起こしたり、
眼球を傷付けたりすることがあるので
注意が必要です。
耳が遠くなる
名前を呼んでも
反応しないといった
加齢による難聴は、
耳の中にある感覚細胞
(有毛細胞)の減少、
聴神経経路の障害などによって
起こります。
また、外耳炎により生じた
耳垢が物理的に
耳道を塞いでいることもあります。
注意点
家族が近付くと
急に攻撃的になることがあります。
こういった症状は
不安からくると考えられるので、
背後から急に近付かず、
まず遠目から
存在に気付いてもらった後で
ゆっくりと近付き
スキンシップをとるようにしてください。
車が近付いても気付きづらいので、
道路付近を散歩する場合には、
決してリードは
伸ばさないよう注意してください。
粗相する
シニア犬(老犬)の失禁は
- 「排尿排泄に関わる尿道括約筋や肛門括約筋の筋力低下」
- 「雄犬あれば前立腺肥大」
- 「避妊雌ではホルモンバランスの異常」
などが原因で生じます。
<対策>
至る所に失禁するようになると、
掃除が大変です。
さらにそれが毎日となると
大きな負担になります。
そんな時はオムツが有効です。
嫌がって
オムツを着けてくれない犬には、
徐々に装着時間を増やして
慣らしてあげましょう。
注意点
オムツはこまめに変える
オムツを長時間
着けっぱなしにしておくと
皮膚炎(オムツかぶれ)を起こすので、
汚れたら
小まめに変えるようにして
あげてください。
陰部付近の毛は、
糞尿が付着するようなら
カットしてあげた方が衛生的です。
尿のチェックを忘れない
シニア犬(老犬)は
膀胱炎にもなりやすいため、
以下の症状があれば、
動物病院に連れて行きましょう。
- 血尿
- 尿が白く濁っている
- 若い頃に比べて臭いがキツイ
- 尿の回数が多い
排泄物チェックも忘れずに
消化管の運動機能や
消化液の分泌能力が低下し、
消化不良や
便秘にもなりやすいので
- 「排泄量は十分か」
- 「便が緩くないか」
なども注意して
観察するようにしましょう。
脱毛・白髪が生える・毛艶が悪くなる
加齢による
- 「脱毛」
- 「毛色の変化」
は、毛母細胞や
毛包色素細胞の減少によって
生じます。
毛艶がなくなることは
毛穴から分泌される
皮脂の減少によるものです。
- 「内分泌疾患」
- 「環境変化によるストレス」
- 「栄養不足」
でも生じるため、
検査・診断が必要です。
<対策>
- 犬用保湿グッズで、皮膚をケアする
- 定期的なブラッシングで血行を良くしてあげる
注意点
加齢によるものですので、
本人が気にしていなければ、
過剰に気にする必要はありません。
かえって保湿しすぎたり
過剰にブラッシングすることで
愛犬のストレスにつながる
可能性があります。
脱毛の場合、
脱毛部位の皮膚が
荒れていないか確認し、
荒れている場合、
皮膚病の恐れがあるため
動物病院へ連れて行きましょう。
口臭が気になる
犬の口腔疾患は
若齢期からも非常に多いですが、
高齢になると
免疫力が低下するため治りが悪く、
食欲不振や
誤嚥性肺炎を起こす
リスクがあります。
<対策>
自宅でできる口腔ケアとして、
歯磨きが有効です。
嫌がって
やらせてくれない
犬も多いかと思いますが、
犬用の歯磨き粉を
舐めさせることから始めて、
好んで舐めてくれるようなら、
歯ブラシを
歯に当てることに慣らしてください。
歯磨きでは、
特に奥歯に歯垢が付着しやすいので、
前の歯から慣らして
時間をかけて
奥歯も磨けるようにしましょう。
注意点
人と同様に
強過ぎる力で磨くと
歯肉を傷付けるので、
適当な力を心掛けてください。
無理矢理
行おうとすると
本気で噛まれますので、
無理せず継続することを
心掛けましょう。
口腔疾患は
若齢でも非常に多いので
- 「高齢になる前から口腔ケアを習慣化しておく」
- 「重度の歯肉炎や歯石付着があるようなら
若いうちに治療しておく」
ことをおすすめします。
食後に呼吸が荒くなったり咳をする
食事を飲み込み、
胃に運ぶ機能の低下
(咳嗽反射や嘔吐反射低下、嚥下筋の筋力低下)
などによって、
肺に異物や
口腔内細菌が入ることで、
誤嚥性肺炎を生じている
可能性があります。
シニア犬(老犬)は
治癒力が弱いため
誤嚥性肺炎は命に関わります。
<対策>
- 食事を台の上に置き、飲み込みやすくさせる
- 愛犬にとって食べやすいフード
(大きさ・硬さ)に変える
注意点
ひどい場合は
呼吸困難になり、
舌や歯肉が青白くなる
チアノーゼを引き起こします。
その場合は、
早急な処置が必要になりますので、
誤嚥性肺炎を生じさせている
恐れがある場合は、
重症化する前に
動物病院へ連れていきましょう。
認知症
高齢になると
脳の障害や萎縮などにより、
記憶力低下を含め
複数の認知機能が低下します。
<症状>
- しつけた行動ができなくなる
- 排泄場所を間違える
- 昼夜逆転する
- 狭いところに入りたがる
- 同じ場所をぐるぐる回る
- 遠吠え(吠え続ける)・夜鳴き
<対策>
排泄場所を間違える時は、
トイレに行きたそうなタイミングを見計らって、
トイレの場所まで連れて行きましょう。
ただし、トイレのタイミングを
見計らうには、
食事などの活動時間を
規則正しくする必要があります。
昼夜逆転する
日中はできるだけ起こして日光浴をさせる。
同じ場所をぐるぐる回る
同じ場所をぐるぐる回り、
壁にぶつかったり
転倒するようなら、
円形サークルを設置するのも
一つの手です。
遠吠え・夜鳴き
遠吠えは、排泄や空腹、
痛みなどが原因であれば
それを取り除いてあげる。
特定の原因が見つからず、
あまりに吠えがひどい場合には、
薬物療法が効くこともあるので
かかりつけの動物病院にて
ご相談ください。
注意点
適度に遊ばせる
好きな遊びや散歩なども、
脳機能の維持に
役立つのでできれば
継続してください。
飼い主自身のケアも忘れない
度重なる問題行動は
介護する家族にとっても
心身的な負担となることが
少なくありません。
すべて1人で
介護しようとせずに、
疲れ切る前に、
近所の動物病院や
ペットシッターに
相談・預けるなどして、
たまには手を抜くことも
上手に認知症の動物と
付き合っていく上で
非常に大事です。
シニア犬(老犬)の注意点
シニア犬(老犬)の
加齢症状や病気以外にも、
老犬の特徴を踏まえ、
飼い主さんに
特に気を付けてほしい点を
紹介します。
脱水を起こしやすい
老犬は
脱水症状を起こしやすくなり、
脱水があると
- 「元気消失」
- 「呼吸が早く・荒くなる」
- 「発熱」
などの症状が見られます。
重度の脱水だと
昏睡状態になるので
注意が必要です。
さらに嘔吐や
下痢があると
水分が急激に失われるので
頻回にみられるようなら
すぐに動物病院に
連れていってあげてください。
脱水では
皮膚が乾燥し
滑らかさを失って
硬くなり
皮膚のバリア機能が低下するため、
皮膚炎を容易に起こします。
寝たきりの子では
褥瘡(床ずれ)の
原因にもなります。
体温調節機能が低下する
「暑い」もしくは
「寒い」環境では
老犬が快適に過ごせるように
環境整備してあげる
必要があります。
<暑さ対策>
- 冷房を使用する(設定温度に注意)
- 日中は日陰で風通しの良い場所でも過ごせるようにする
家にいる時や散歩中は
いつでも新鮮な水を飲めるようにしておく
<寒さ対策>
- 日中は日当たりの良い場所で過ごせるようにする
- 寝床に毛布を入れる
- 暖房器具を使用する
- 加湿器などを用いて湿度を50~60%程度に保つようにする
感染症にかかりやすい
免疫機能に関わる臓器である
骨髄や胸腺の機能が低下するため、
細菌やウイルスなどに対する
感染リスクが高まり
- 「口内炎」
- 「肺炎」
- 「胃腸炎」
- 「膀胱炎」
- 「皮膚炎」
などが生じやすくなります。
<対策>
- 栄養バランスのとれた十分な食事を摂る
- 体や生活環境を清潔を保つ
口腔内は歯磨き、陰部が汚れていれば
ぬるま湯とガーゼなどで優しく拭く
まとめ
- シニア犬になると、加齢症状が出るようになります
- 加齢症状に合わせた対策を心がけましょう
- 高齢に差し掛かったら少なくとも1年に2回は定期健診を
若齢のうちから
将来を危惧して
バリアフリーにする必要は
まったくありませんが、
高齢に近付き
加齢症状がみられるようになったら、
少しずつ先回りして
準備することが大切です。
シニア犬(老犬)は
加齢症状と合わせて
複数の疾患を持っている場合も多く、
それらが絡み合うため
症状や経過が
個体ごとに大きく異なります。
加齢症状が複合して
病的経過をたどることもあるので、
高齢に差し掛かったら
少なくとも1年に2回は
定期健診を受けるように
しましょう。
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